第25章 本音か嘘か※
体を流しながら今後のことについて考えた。気持ちを伝えたことを後悔しているわけではないが、今までのように接することはできるだろうか。
「……はあ」
本来であれば、こんなことになっていいはずがないのに。中心近くに潜り込むために彼女との距離を詰めたのに、逆にこちらが虜になってどうする。
頭の中から亜夜のことを追い出そうとすればするほど、先程の光景を思い出す。薬の効果はとっくに切れているはずなのに、再び熱を持とうとする自身に呆れた。
それをどうにか抑え込んでバスルームを出る。亜夜に声をかけようとしたが……電話しているようだ。
『ジン……好きだよ』
聞こえた言葉に胸がキュッと締めつけられた気がした。体の熱が一気に引いていく。
『ふふっ……よかった。じゃあ、また明日ね。おやすみ』
そっと顔を覗かせれば、スマホの画面を見ながら嬉しそうに笑う亜夜。こちらに気づく素振りはない。
壁にもたれかかって頭を抱えた。
「馬鹿じゃないのか……僕は」
かすれた声で呟いた。しかし、いつまでもここに立ったままでいるわけにもいかず。何度か深呼吸をして彼女に声をかけた。
「……次、どうぞ」
そう言うと亜夜は驚いたように起き上がる。本当に気づいてなかったんだな……虚しい気がする。
『あ、ありがと』
パタパタとバスルームへ消えていく姿を見て、ため息をついた。そして、ベッドの周りに落ちている服をかき集める。亜夜のドレスと自分の着てきたものはハンガーにかけた……彼女の下着はどうしたものか。
『なにしてるの?』
「……早すぎませんか」
『明日の朝、もう一回入るから。あ、下着は洗うから』
それらを持って再度バスルームへ消えていく。数分後、戻ってきた彼女はベッドへ寝転がった。
『明日、何時に出るの?』
「特に用もないので貴女に合わせますよ」
『……なら11時で。おやすみ』
会話を終えてすぐ、寝息が聞こえてくる。相変わらず寝るのが早い。
自分もベッドで寝ていいのだろうか……まあ、大きなサイズだし離れていれば問題ないだろう。
疲労は意外にも溜まっていたらしく、横になると急に瞼が重くなる。
「僕は、本気ですから」
亜夜には届いてないだろうが。彼女にキスしたくなる気持ちを抑えて眠りについた。