第25章 本音か嘘か※
バーボンside―
気持ちに歯止めが効かなくなったのはいつだろうか。
―4人で来たかったな
2人で海を見に行った時、亜夜が漏らした言葉にはどれだけの思いが詰まっていたのだろう。泣きそうな顔をした彼女にキスをしたのは衝動的なものだった。
この任務の指示を受けた時、なんとも言い難い気持ちになった。亜夜に触れられる事は嬉しいとは思ったが、必要以上に踏み込んでしまえば戻れなくなる気がした。
彼女は敵。何度も自分に言い聞かせた。それなのに……
自分の下で乱れる亜夜に抑えが効くわけなかった。可愛らしい反応も艶やかな声も……自分によってこんな姿になっている、そう思うだけでどうしようもなく興奮した。
「僕は……貴女が好きです」
その言葉が簡単には受け入れられないことは予想していた。案の定、返ってきた言葉に苦笑が漏れた。だけど、伝えずにはいられなかった。
「亜夜、好きですよ」
そう言えば、亜夜は耳を塞ごうとした。少しだけでも、僕の言葉に心が揺れている可能性を垣間見て、彼女の気持ちが変わる可能性がゼロではないことに変な安心感を覚える。
「亜夜……」
『やだ、聞きたくない……!』
「僕ならそんな思いはさせません。そして何より……」
今、僕はバーボンの姿であるだろうか。でも、口を出ようとしている言葉はバーボンでも安室透でもない……これは、降谷零としての言葉。
「僕なら、貴女をこの闇の中から救い出せる」
彼女がしてきた事全てが無罪になる訳ではない。裁かれるべき事だってもちろんある。でも、彼女の育った環境がそうさせていたのだとすれば、罪はいくらか軽くなるかもしれない。
そもそも、元からそういう人間であったとは思えない。亜夜として振舞っている時は特に。
伝えた言葉に対して返ってきたのは、またしても問いで。しかし、それにこたえることなく、止まっていた行為を再開した。
また、亜夜を抱ける日は来るのだろうか。そんな思いから心の奥底にしまっていた気持ちが次々に溢れていく。そして、彼女が達したと同時に自分もゴムの中に欲を吐き出した。
本来ならシャワーは先に女性が使うのが筋なのだろうけど、脱力した亜夜を無理矢理起こすこともできず、情けなさを感じながらバスルームへ入った。