第23章 デート……?
「……しかし、視線を集めてしまったようですよ」
そこで我に返る。この場所に留まり続けるのは良くないか。でも、お腹すいた……。
「お店に入るより、テイクアウトした方がいいかもしれませんね」
『……そうだね』
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『なにこれ!美味しい!』
いろいろ見て回り、選んだのは有名なハンバーガーショップ。そういう店の勝手はわからないので、全部透に頼んでもらったけど……初めて食べる味は予想をはるかに超える。
『ん〜もっと早くに知りたかった〜』
「やっぱり、あの感じの店には馴染みがないんですね」
『そうだね。外食はあまりしないし、行くとしてもコースのあるレストランばっかりだし』
連れて行ってくれるのはベルモットだけ。ジンとかウォッカを誘っても面倒臭いの一言で終わるし。
『ねえ、一口ちょうだい』
「……どうぞ」
大きく口を開けて、透の持つバーガーへかぶりつく。こちらもなかなか……
「ソースついてますよ」
『ん……取れた?』
「まだです」
鏡見ないとわからないな……と思いバッグに手を伸ばそうとしたところで、口の端を透の親指がぐっとなぞる。
「……はい、取れました」
透はソースのついた指をペロッと舐める。その動作にドクンと心臓が跳ねた気がした。
『あ、ありがと……』
顔を見れなくて、残りのバーガーを夢中で食べた。
デパートでの用事は終わったので食べ終わってすぐ、なんとなくぎこちない雰囲気のまま車へ向かった。
「あ、そうだ。買いたい物があるの忘れてました……先に車へ行っていてください」
『……わかった』
差し出された車のキーを受け取る。ついて行こうか迷ったけど、今は1人になって落ち着きたかった。
『はぁ……』
助手席にもたれかかってため息をつく。歩き回って疲れたのもあるけど、あんな些細なことに動揺したことに自分でも驚いた。きっと深い意味はない。私が変に意識してしまっているだけ。
10分くらいで透が戻ってきた。
「すみません、お待たせしました」
『大丈夫。買いたい物は買えた?』
「ええ、お陰様で」
エンジンがかかり、車が揺れる。
「他に行きたい場所ありますか?」
『他に?』
これで帰るつもりだったから、急な問いに考えを巡らせた。
「特にないなら……」
『海、見に行きたい』