第23章 デート……?
『え、一緒に行くよ』
「大丈夫ですよ。駐車場まで少し距離ありますし、その辺で休んでてください」
『……何かあったら連絡して』
「ええ」
では、と言って歩いていく透の背にため息をつく。面倒なことが起こる気がするんだよな……。
そして案の定。
「なあ、一緒に来てよ。なんでも買ってあげるからさ」
「そうそう、俺たちとデートしようぜ」
ガタイのいい男に囲まれた。その気になれば指1本触れさせずに気絶させられるけど、こんなデパートの中でやる訳にはいかないし、なにより目立ちたくない……いや、もう既に目立っているのかも。
無視し続けてもしつこいし、男物の香水の匂いがキツい。やっぱり無理にでもついて行けばよかった。
「なあ、君名前は?歳いくつ?」
『……』
「無視しないでよ、仲良くなりたいんだからさぁ」
肩に手が回され……かけたところで、その手を掴みあげられる。
「っ……いってえな!離せよ!」
「彼女になにか用ですか?知り合いには見えませんが」
「チッ……男連れかよ……」
腕を振り払った男はジロジロとこちらを見てくる。その後、ニタッと笑った。
「君、こんなヒョロいやつが好みなのかよ……絶対俺たちの方が楽しませてやれるぜ」
……どこからそんな自信が湧くのだろう。呆れてものも言えない。
「待たせてすみません。行きましょうか」
「おい!無視してんじゃねえぞ!」
全く相手にされないことにイラつき出したようで、声を荒らげる男達。周囲の視線も向けられてるし……本当にろくなヤツらじゃない。更に注目を浴びるかもしれないけど……仕方ない、切り抜けよう。
透の服の胸元辺りを掴んで引き寄せる。襟を立てて口元を隠し、自分の顔を寄せた。
『悪いけど、アンタたちが入る隙なんてないのよ』
「なっ……お、お前みたいなブス、誰が相手にするかよ!!」
男達はかっこ悪い捨て台詞を残して去っていく。気にかける必要もないので、掴んでシワがよってしまった透の服を整える。
『……よし、行こう』
「もっと他に方法なかったんですか?」
『手っ取り早い方がいいでしょ……本当にキスしたわけじゃないんだから』
口元を隠したから傍から見ればキスしたように見えただろうけど、実際は寸止め。まあ、何回かキスしたことあるから普通にしてもよかったのかもしれないけど。