第23章 デート……?
『今、一人ですか?よかったら……』
「すみません、人を待っているんです。他を当たってください」
『ええ……せっかく会えたんだからお話しましょ?』
バーボンの腕を掴んでニコッと笑いながら首を傾げる。
「お断りします」
『もしかして、待ってるのって彼女さんですか?』
「……いえ、まだ違います」
……まだ?まだってなんだ?
これ以上聞くと自分にダメージがありそう……そう思って腕を離した。
『ふふっ……バーボン、私よ』
「……その声、マティーニですか?」
『そう。待たせちゃったかしら?』
「いえ……どうぞ」
助手席のドアを開けてくれる。乗り込んで一度メガネを外した。
「……変装するんですね」
車のエンジンをかけながらそう言われる。
『一時期いろいろあってね……プライベートは基本この顔よ』
「連絡してくれれば……」
『さっき気づいたのよ。それにちょっとからかってみようかなって……ガード硬いのね』
「貴女との約束があるのに、他の女性について行く訳ないでしょう……せっかくデートに誘っていただいたんですから」
『……これってデートなの?』
「違うんですか?」
『あの時のお礼と服買うだけだよ?』
「いいんですよ、デートで」
ニコッと笑うバーボン。窓の外を眺めながら小さくため息をついた。
デートなんてしたことがない。そもそも誰かと買い物に行くことが滅多にない。だからジンもあんな言い方したのかな……。
しばらくして着いたのはいろんな種類のお店が入った大きいデパート。
「ここからは名前で呼んでくださいね」
『うん』
車を降りると手を差し出される。キョトンとしてバーボン……じゃなくて透の顔を見る。
「デートなんですから」
そのまま手を取られて、あろうことか指を絡ませる繋ぎ方……恋人繋ぎをされる。
『ねえ……ちょっと……』
「今日だけです。それに傍から見れば僕達だって恋人同士に見えますよ」
キュッと指先に力が込められて振りほどくこともできず。
「……あ、逆の方がいいですか?」
『逆?』
「傷のない方がいいならと思って」
『大丈夫よ。もう全然痛くないから』
「普通、銃による傷は治るまでに時間かかるんですよ」
『それだけ組織の技術がすごいってことでしょ』
「へえ、興味深いですね」
『……気になるの?』