第22章 印※
頭の上でくつくつ笑う声がする。
任務で他の男に抱かれることはあるけど、ちゃんとしたセックスをしたことがあるのってジンだけなんだよな……そう言ってやろうと思って振り返るとグラッと頭が揺れる。
「……おい」
『ごめん……クラクラする……』
湯船に浸かってあんなことすれば当たり前なのかもしれないけど……のぼせたらしく、ジンの胸に頭が当たる。
「ったく、世話が焼ける」
抱き上げられてそのままベットへ。シーツ濡れちゃうか……明日洗おう。そう思いながら、頭を押さえて目を瞑る。
「水、飲め」
ベッドの横のテーブルに水の入ったグラスが置かれる音がしたけど、起き上がる気力がない。
「はあ……ちょっと起こすぞ。口、開けてろ」
頭の後ろに手が回され、そっと起こされる。うっすら目を開けるとグラスを傾けているジン。顔が近づいてきて口移しで水が流し込まれた。口に入り切らなかった水が口の端をつたって落ちていく。
『……もっと』
「てめぇ……明日覚えとけよ」
ジンに口移しされながら何度か水を飲んで、なんとなく落ち着いてきた気がする。
『ごめん……ありがと』
「大丈夫か」
『うん』
「……無理させたな」
優しく頭を撫でられる。時折見せる優しさって、他の誰かにも向けられるのだろうか。そう考えるとモヤモヤする。
「この先の予定は?」
『休暇はあと1週間……3日後に予定あるけど』
怪我の療養の為に長い休みを貰った。明日、明後日は射撃場と闘技場に籠るつもり。
「予定?」
『そう。バーボンと出かけるの』
頭を撫でる手が止まった。
「……なんであいつと」
『この間助けてもらったお礼。服も弁償しないと……』
「俺の時は……」
『あの時はジンが必要ないって言ったでしょ……』
本当に何か返したかったのに……あんな言い方されたら何も言えないし。
「なんであいつとデートするのがお礼なんだよ」
『デートじゃないし……なに、ヤキモチ?』
「……」
『……なんか言ってよ。冗談のつもりなんだけど』
「チッ……」
首元に小さな痛み。首元だけじゃない、そこから少しずつ下へ……赤い印が増えていく。
『ちょっと……』
「明日、泣いてもやめねえからな……」
『っ……』
ニヤッと笑ったジン。その表情に目を奪われた。
「忘れんな……お前は俺のものだ」