第22章 印※
心臓がドキンと大きな音を立てた。のぼせたのとは違う熱が顔に集まる。ものすごく恥ずかしくて顔を隠した。
「……隠すな」
『いやっ……今はほんとにだめ……』
手を掴んで退けられる。目を合わせることなんて出来なくて顔を背けた。
『ひっ……あ!』
耳の縁を軽く噛まれる。そのまま舌先でなぞられた。
「……こっち向かねえならこのまま襲うぞ」
さすがに今、抱かれると身体が持たない……そう思って恐る恐る顔を向ける。
「ハッ……なんて顔してんだよ」
ジンの指が頬をさらりと撫でる。そんな行動の一つ一つに胸の高鳴りが大きくなっていく。溢れそうになる感情を抑えたくて……
「……亜夜」
こっちの気を知ってか知らずか呼ばれた名前に全てが崩された。
『ジン……』
「……」
『好きだよ』
「……ああ」
返事の代わりに深いキスが落とされた。同じ言葉は期待してなかったけど、拒まれなくてよかった。たとえ気持ちが通じているのだとしても、恋人同士にはなれない……これ以上の関係は望まないし、望めない。
口が離れて、ジンが私の横に寝転がる。向き合うとジンの白い肌が目に入り、その胸元を指でなぞった。
「んだよ、誘ってんのか」
『……違うよ』
「なら寝ろ」
ジンの腕が背中に回って抱き寄せられた。鼓動が聞こえそうな距離……徐にジンの胸元に唇を寄せて、その白い肌に吸い付いた。
『ん……あれ、つかない……』
「フッ……下手くそ」
吸い付いた場所はほんの僅かに赤くなっただけで、ジンが私につけるキスマークには程遠い。何度やってもつかない。
『む……なんで……』
「お前には無理だ、諦めろ」
そう言われてちょっとイラッとする。吸って駄目なら……
「っ……いってえな」
身体を起こしてジンの肩に噛み付いた。残った歯型を舌でなぞる。そんなに強く噛んだ訳じゃないから血も出てないし、きっとすぐに消えてしまう。
『ふふっ……私のって印』
でも、消えるまで……その間くらい私だけのものでいて欲しい、なんてわがままだろうか。
ジンを見ると不思議な表情をしてる。
『ごめん、痛かった?』
「……そうじゃねえ」
『わっ……』
頭を引き寄せられてジンの胸に耳が当たる。顔を見ようとしたけど……この体勢じゃ無理か。
傍で聞こえる鼓動が心地よくて、次第に瞼が落ちていった。