第2章 新たな組織と曲者たち
「……ラムが表に出てくることは殆どないから。あれが普通よ」
コソッとベルモットが耳打ちしてくれた。
「いや、壮観。コードネームを持つものが一同に揃うのは……それで、あなたが亜夜か。名前は昨日ベルモットに聞いた。ようこそ我々の組織へ」
私に向けて言う。私は軽く頷いた。
「それでは、早速だが話をしよう」
と言ってモニターが変わった。まあ、ラムの顔が見える訳ではないのだが。
「まず、我々の要求に応じてくれた事に感謝する。あなたのような優秀な人材はなかなか居ない。そして、我々の組織のことについてだが……」
そこから始まった説明を要約すると……この組織はボスと呼ばれる人の望みを叶えるために結成されたもの。そのボスとは有名な富豪であること。そして、コードネームのこと。
「コードネームに関しては、もう気づいているかと思うが、酒の名前だ。ある程度の能力と働きを認められた者には、ボスの了承の元、コードネームが与えられる。あなたにもいずれ……」
『待ってください』
思わずそう言った。周囲に緊張が走る。
「ちょっと亜夜……」
「黙りなさい、ベルモット。何か……亜夜」
そう言われてベルモットは口を噤んだ。
『どうして、私の事をそこまでかってくださるんですか?まだ、何もしていないのに、コードネームが与えられる前提だなんておかしいです』
しばらくの沈黙。ラムが口を開いた。
「どうして、か……あなたは知らないだろうが、私とあなたは1度会ったことがある」
今までこの組織と取引した時のことを思い出すけど、心当たりの人物はいない。
「そのときのあなたを見て思った。敵として存在するのは好ましくない。それにこれから先、我々の組織は更に力を得なければならない。だから、我々の組織の一員として迎える判断をしたまで……納得したか」
ラムの声には先程まではなかった威圧感があり、頷くことしか出来なかった。
「そして……」
再びモニターの画面が変わる。それを見て、背筋が凍った。
「あなたの居場所はこの組織。我々から逃げることはできない。覚えておきなさい」
モニターの画面に移された新聞の一面。その見出しは[爆発か ビル一棟全焼] ……昨日私がいた建物の爆発事故が取り上げられていた。
「組織を1つ消すのは造作もない。人なら尚更……」