第21章 秘密
ピンポーン
「亜夜久しぶりだね、どうぞ」
『お邪魔します』
明美に促されて部屋へ入る。整頓された綺麗な部屋。
『これ、よかったら食べて』
「え!これすごく人気のやつだよね?!ありがとう!」
『喜んでくれてよかった……あ、お手洗い借りてもいい?』
「うん、そこのドア……」
彼女が言い終わる前にスマホの画面を見せた。
《声に出さないで答えて……この部屋に組織の人間が来たことはある?》
明美は小さく首を振る。その表情はとても硬い。
《直近で組織の人間にあったのはいつ?》
それを見せて明美にスマホを渡す。
《3日前》
3日前……明美と会う約束の電話をした日。
《私がいいって言うまで声出さないで。ちょっと調べるから。それと、貴女のスマホ貸してもらえる?》
彼女が頷いたのを確認しバッグの中から一つ機械を取り出す。盗聴器や発信器を見つけるやつ。部屋の中をくまなく探すと、明美の上着の襟の裏、靴の底、バッグの隅にそれぞれボタン型の盗聴器が。
―あの女に会うんだろ
3日前、明美と電話した時にジンはそばにいなかった。電話をしたのは私の部屋だったし、そこに盗聴器が仕掛けられている可能性は低い。ならば、ジンがその情報を得たのは……この3つの盗聴器から。
モヤモヤした気持ちを抑えきれず、その3つを潰した。うまい言い訳考えておかないと。
そして、もう一つの機械。それを明美のスマホに繋げる。
『……こっちは大丈夫か』
遠隔操作のアプリは入っていない。立ち上がってもう一度部屋の中を確認する。
『……もういいわよ』
機械には何の反応もなくて、これ以上何か仕掛けられていることはなさそうだ。
『明美?』
「え、あ、ごめん……お茶入れるね」
そう言って動き出した明美の手は震えている。
『無理しなくていいわ……私がやるから、貴女は座ってて』
「……ううん、大丈夫」
震えている声に、目に浮かんだ涙。思わず彼女の手を掴んだ。
『……明美。貴女、いつから知っていたの?』
「なんの、こと……」
『貴女の恋人がFBIの人間であること……本人に聞くより前から知っていたでしょ』
「っ……ごめん、ごめんなさいっ」
ついに泣き出してしまった明美の手をそっと引いて、部屋にあったソファに座らせた。
『……落ち着いたら話して欲しい』