第21章 秘密
「……怪しいって思ったのは、彼を志保に会わせた時……待ち合わせ場所に行く途中で、誰かと話してるのが見えて……」
明美は鼻をすすりながらポツポツと話し始める。
「でも、誰かなんて聞けなくて……会うことは減るし、亜夜と志保には言おうか迷ったけど、そんなことしたら彼が……」
『2週間前、彼に直接言われたでしょ』
「うん。FBIだっていうのはその時わかったけど……」
『……どうして』
明美の両肩を掴む。驚いたような彼女の目を見て、手に力がこもった。
『どうして離れなかったのよ!貴女利用されてたのよ?!気づいてたなら……』
「……大君にも同じこと言われた」
また一粒彼女の目から涙が零れる。
「それでもよかった。彼の近くにいる理由になるなら……あんなに好きになった人初めてだったから……」
『明美……』
「大君は……生きてるんだよね?死んでないよね?」
『……ええ、彼には逃げられた。私が逃がしてしまった』
「もしかして……亜夜が……」
『彼を始末するように指示があったの。だけど、油断しすぎたのね……撃たれてそのまま……』
「撃たれた?大君が……亜夜を……?」
頷くと明美の目から流れる涙。嘘をつくのは心苦しかったけど、あの時のことは誰にも話せない……保身に走ってるようで自分に嫌気がさす。
『前のより傷は新しくした大きくないし、もう問題ないから』
「っ……ごめん、亜夜……」
『貴女は悪くないわ』
「違う……亜夜を傷つけたのに……大君のこと責められない。だから、ごめんなさい……!」
『……もっと早く気づけてたら』
あの感覚から目を逸らさなければ……明美をここまで苦しませることはなかったかもしれない。この事態を招いてしまったのは私だ。
『……明美、一つ約束して欲しいことがある』
「約束……?」
『彼がFBIだと気づいていたこと、彼にそう言われたことは誰にも話さないで』
「……」
『もちろん志保にも。誰に何を聞かれても、知らなかったで通して』
「なんで……」
『脅すようで悪いんだけど……もし、知っていたことがバレれば……今度は貴女が狙われるわ。最悪のことだって有り得る』
明美は青ざめた表情を浮かべた。
『この先、盗聴器や発信器が仕掛けられることだって……』