第20章 今だけ
ジンside―
任務の集合場所へ向かう途中、ラムから電話があった。
「……なんだ」
「今日の任務のこと、誰かに話したか?」
「……いや」
マティーニには話してしまったが、あいつが他言することはないだろう。
「それならば間違いない……今日の任務は中止する。ライはNOCだ」
「どうしてわかった?」
「今日集まる場所に潜んでいた者がいた。他に情報を漏らす者はいないだろう?」
「フッ……なるほどな」
「……始末は別の者を向かわせる」
切られた電話……これで3人目。組織の規模が大きくなっていくと同時に入り込んでくる鼠の数が増える。まだ潜んでいるかもな……。
タバコに火をつけ、ウォッカに迎えにくるようメールを打った。
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アジトに戻り、マティーニのもとへ向かう。あいつの車はあったし、きっと部屋にいるだろう……と思ってドアを開けたが気配はなく。科学ラボか……とも思ったが、銃が並べられたケースの中にあいつの愛銃だけがない。
まさか……電話をかけたが電源を切っているようで繋がらない。
最悪の考えがよぎって部屋を出た。そこでベルモットに出くわす。
「あら、ジン。ずいぶんな慌てようね……あの男のこと?」
「……いや、あいつを見たか?」
「マティーニのこと?……いいえ、知らないわ」
舌打ちをしてラムに電話をする。
「何か……」
「まさか、あいつを向かわせたんじゃねえだろうな」
「……彼女にご執心とは聞いたがここまでとは」
「んなこと聞いてねえ……あいつを行かせたのか?」
「そうだが……問題でも?」
スマホがミシッと音を立てる。
「てめぇ……」
「彼女が死ぬことはない……まあ、怪我くらいはするかもしれないが」
平気で言うラムに殺意しか湧かない。ベルモットの顔も少しずつ暗くなっていく……とそこで聞こえた着信音。
「Hi……バーボン?急に何かと思えば……どういう……は?!まさか、あの男……マティーニは無事なのよね」
あいつの名前が聞こえてベルモットからスマホを奪い取った。
「あ、ちょっと……」
「そこで待ってろ。迎えに行く」
「僕が連れていった方が早いかと思いますが」
バーボンの声に苛立ちが抑えられない。
「……やむを得まい。駐車場までの出入りは許可しよう……私からメールで伝える」