第20章 今だけ
私の足元に置かれた私の拳銃。代わりにライは私を撃ち抜いた銃を拾い上げる。
「……すまなかった」
ライはそう言って去っていく。一体何に対しての謝罪なのだろう……。
ライの姿が見えなくなると同時にその場に座りこんだ。
『ははっ……馬鹿だなぁ、私』
ラムの命令を聞いて、ここに来るまでにあらゆる方法を考えた。どうしたらライを始末できるのか……結果出した答えが怒りに任せて引き金を引く、というもの。感情に支配されればきっと大丈夫、余計なことを考えずに済む……なんて考えの甘さ。
結局ライの言葉に怒りは引き、その上明美のことが頭をよぎり、自身を撃ち抜くことになった。
傷口がドクンドクンと波打っている感じがする。お腹に銃弾を受けた時よりまだマシな気はする……予想していたものだし。でも、血は止まりそうにないし右手は動かない。連絡したくても、どっちの手も使えそうにない。
……このまま死ぬのかな。
死ぬ訳にはいかないのだけど。ライの頼みも聞かないといけないし、何よりジンからの命令に背くわけにいかない。
もう少しこのまま……そう思って目を瞑った。
それからどれだけ時間が経っただろう。近くで聞こえたエンジン音。この音って……
「マティーニ!大丈夫ですか?!」
駆け寄ってきた姿に目をうっすら開く。
『バー、ボン……?なんで……ここに……』
「その話は後です……手退けてください」
『いっ……』
傷口を布か何かで押さえられる。
「ここじゃ無理か……誰かに連絡しましたか?」
小さく首を振る。するとバーボンは舌打ちをした。そして、上着を脱いで私の右肩へにかけた……なんかデジャブ……?
『服……汚れちゃう……』
「貴女は……もう少し自分の心配してください」
そのまま横抱きにされ、倉庫の入口に横付けされた車の助手席へ下ろされる。バーボンはどこかへ電話をしはじめた。
「僕です。アジトの場所教えてください……マティーニが撃たれています」
あの時と違って意識はあるから、会話が聞こえる。
「ええ、おそらく……僕が連れていった方が早いかと思いますが……詳しいことはそちらで……はい、また」
電話を終え、スマホを操作した後、車が動き出す。
「少し飛ばしますよ」
小さく頷いた。車の揺れに傷が痛むがぐっと堪える。
『なんで……あの場所に……』
「それは……」