第2章 新たな組織と曲者たち
「……それならどうする?こちらで決めてしまった方がいいかしら?」
名前など……いや、ひとつだけある。
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「黒羽亜夜ってどう?」
『急に何?』
「名前よ、あなたの名前。どう?なかなかいいセンスじゃない?」
『ふふっ、そうだね。何かあったら使わせてもらうね』
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『黒羽亜夜……にして欲しい』
「あら、ちゃんとあるじゃない」
『……セカンドがくれた名前。大事にしたいから』
「そう、いい名前ね。それで手続きしておくわ。……誕生日はどうする?」
『それは決めてもらって構わない』
「それじゃあ、今日の日付けにするわね。貴女が黒羽亜夜として生きるって決めた日だし」
『うん、そうする。ありがとう』
「どういたしまして」
名前と誕生日があるだけで、違う自分になった気がした。もう、"ファースト"は存在しない。
いくらか柔らかくなった亜夜の表情を見て、ベルモットは言った。
「……過ぎたことを蒸し返すようで悪いんだけど、怒ってないの?」
『怒る?誰に?』
「ジンよ。貴女のボスだったヤツを殺した男」
先程の情景がフラッシュバックした。それでも、怒りは沸いてこない。
『……たぶん、彼が引き金を引かなかったら、ボスのこと見逃した気がする』
「あんなに怒ってたじゃない」
『うん……なんか銃口を向けた時、今まで感じたことのないくらい緊張して、指が固まったの。怖かったんだと思う、積み上げてきた物が全部壊れちゃう気がして』
あんなヤツでも生かしてくれた。それは覆しようのない事実。セカンドが死んだ時、頼りにしている、なんて中身のない言葉に縋った自分がいるから……。
『だから、ジンが殺してくれてよかったのかも……後で謝らないと』
「……変なとこ律儀ね」
『感情が高ぶってたとはいえ、ひどいこと言っちゃったから。これから同じ組織で生きてくんだし、始めからギスギスした関係にはなりたくない』
「わかったわ、明日会うだろうからその時言いなさい。それじゃ、私行くわね。明日また迎えに来るわ。それまでゆっくり休んで」
『うん、また明日』