第19章 アンバランス
「一緒に行動した方がいいと思いますが……」
『見知った人達に声掛けて来るから……あまり長居する気もないし』
こういう場で他組織の情報交換なんかも行われる。だからこそ釘を刺しておかないと。
2人と一度分かれ、挨拶の為に他組織の人に近づけば、顔を強ばらせて辺りを見回す。
『……今日は彼とじゃないの。あんまり警戒しなくても大丈夫よ』
そう言えば明らかに安心したような雰囲気になる。どこの組織からも警戒されるジンって……たぶん、まだ私が知らない部分があるのだろう。
一通り挨拶が終わって2人と分かれた場所に戻る。途中で配っていたシャンパンを手に取って……。
「ねえ、無視しないでよ。1人なら一緒に来ないか?」
所謂ナンパ……どこぞの御曹司か知らないが面倒くさい。相手にしない方がいいんだろうけど、ずっと話しかけてくるからイライラが止まらない。
『連れがいるから』
「連れ?なら俺の友達も呼ぶからさ」
顔も見ずに言ってもまだ引き下がらない。それどころか肩に腕を回される。馴れ馴れしいし、気持ち悪い。
たまらずため息をつく。その時、肩から腕が外れる。
「俺の連れに何か用か?」
「いててっ……おい、痛い!離せ!」
聞こえた声の方に顔を向けると、呆れたような顔のライ。パッと手を離すとその御曹司はこちらを睨みつける。
「チッ……男連れなら最初から言えよ!覚えとけ!」
捨て台詞を吐いて去っていく。なんとも雑魚キャラのような……まあ、自業自得だ。
「なんで抵抗しない」
『大事にしたくないのよ……ただでさえ注目されてるんだから』
「……ったく」
『ごめん、でも助かった。ありがと』
口をつけていなかったシャンパンのグラスを傾けた。
「こういう場にはよく来るのか?」
『あんまり……普段はベルモットが来るから。まあ、新入りがいると連れてこいっていう、暗黙の了解みたいなのはあるけど』
他組織のメンバーだと知らずに手を出して死にかける馬鹿がいるらしく、いつからだかそんなルールができた。だからこそ、今回はスコッチを含めた3人の予定だったのだろう。
『にしても遅すぎない?』
グラスが空になってもバーボンが戻ってこない。そんなに時間のかかる内容じゃないはずなんだけど。
「……あと5分待って来なければ探しに行くか」
『そうね』
全く……何してるんだか。