第19章 アンバランス
今日の現場はパーティ会場。潜入の任務とはいっても今日は付き添いみたいな感じらしい。やるべき事はライとバーボンがやってくれるから、余計にその場に居づらい。
私が行くように頼んだのはバーボンらしい……まあ、そうだよね。
さすがにこの格好で運転はしたくない……と思っていたら行きはバーボン、帰りはライがいつものところまで送ってくれるとのこと。アジトの場所はまだ伝えないようだ。
「相変わらずお綺麗ですね」
『……そう。ありがと』
どんな雰囲気で来るものかと身構えていたけど、案外普通で拍子抜けしてしまった。
『もう少し落ち込んでるかと思ったけど』
「……否定はしませんが、過ぎたことですから」
相変わらずの笑顔からは、その言葉が本心なのか嘘なのかわからない。窓の外を見てため息をつく。
『私を呼んだ理由は?』
「わかりませんか?あの男と2人で任務なんてたまったもんじゃありませんよ」
『今後は貴方とライは組ませない方がいいわね……ベルモットにも伝えておくわ』
「……助かります」
会場から少し離れた駐車場に車が止まる。既に来ていたライの姿。
車を降りれば、お互いの近づくなオーラがすごくてもう嫌、帰りたい。この2人に挟まれながらも、平気な顔をしていたスコッチって本当にすごいんだな……なんて思って。改めて彼がいなくなったことを感じてため息をついた。
「浮かない顔だな。何かあったか?」
ライも普段通りの様子で、変に意識してるのは私だけらしい。
『……別に。行こ』
そう言って歩き出そうとすると差し出される2人の手。ポカンと2人を見るとクスっと笑う声。
「エスコートくらいさせてください」
バーボンは普段通りの笑顔。ライはその様子を見てか手を下ろした。引き下がってくれそうもないので、出された手に手を重ねた。それを引っ張られて腕を組む形になる。
会場に入れば妙に視線を集めている気がする。まあ、この2人顔はいいしな……。
様々な会社の重役クラスの人間が集まるパーティだが、裏社会の者もそれなりにいる。取引で関わった見覚えのある顔が何人か……。こんな場でもデータの受け渡しだったり、小さい物を扱う取引は行われる……それに気づくことのない平和ボケした人達はいい隠れ蓑になる。
『それじゃ終わったら戻ってきて。この辺りにいるから』