第17章 制裁
バーボンside―
スコッチからの連絡を見て慌てて部屋を飛び出した。なぜ、どうして……そんな考えが頭を埋めつくしていく。
街を走っていると目に付いたマティーニの車。
「……ここか?」
ビルは2つ……しかし、迷っている暇はない。近い方の階段を駆け上がる。
スコッチ……いや、ヒロ……死なないでくれっ……!
スコッチとともにいるのがマティーニなら、もしかしたら見逃してくれるかもしれない。2人の仲なら……!
バンッ
あと少しで屋上……といったところで聞こえた発砲音。頭が真っ白になっていくが足は止まらなかった。
やっとの思いでたどり着いたそこには……マティーニではなく、ライの姿。
「裏切りには……制裁をもって答える……だったよな?」
振り返ったライ越しに見えたスコッチ。胸元に飛び散った血……それはライの顔にもあって。
スコッチに駆け寄るが揺すっても鼓動を聞いてもなんの反応もない。
「ライ……貴様……」
尋常ではない怒りと憎しみが湧く。この男が殺したのか……?
踵を返したライに何も言うことができなかった。
「……」
再度スコッチの姿を見て気づいた。右手は血まみれなのに、親指と手の甲には血が付いていない……。
「自殺……?」
ならば、なぜライは自分が殺したかのように言った?あいつが拳銃を渡して自殺するよう仕向けたのか……?
助ける気はなかったのか……。スコッチとライの仲は悪くなかったのに。
たくさんの考えが浮かんで消えて……残ったのは絶望と組織に対しての憎悪。
ふと、誰かが背後に立った気配。でも、顔を上げる気にはならなかった。……ここで僕も殺されるのか?
『だから言ったのよ……仲良くなりすぎると後悔するって』
その声はマティーニのもの。少し視線を向け……その背に見えたライフルのバッグ。
「なぜここに?」
『ライがヘマしないように……万が一の時は2人まとめて殺れってね』
スコッチが死なない運命などなかった。その事実に更に憎悪が増した。
『貴方はなんでここにいるの?彼がNOCだと知ってるのはほんの一部の幹部だけよ』
「……わざわざ連絡くれたんですよ。仲良くしてたからですかね。最期くらい立ち会おうと思って」
半分は本当で、半分は嘘。それでも納得してくれたのか、それ以上聞かれることはなかった。