第17章 制裁
ライside―
「さすがだなスコッチ……俺に投げとばされるフリをして俺の拳銃を抜き取るとは……」
ジンにスコッチを殺すよう指示を受けて彼を追った。殺すためではなく、逃がすために。もちろん、スコッチは俺の正体を知らない。警戒して逃げられたが、追い込んだ先はジンに指示された廃ビル。誰かが待ち伏せている可能性もあったが、そこの屋上にはスコッチと俺の姿しかなかった。
----------------------
「自殺は諦めろスコッチ……お前はここで死ぬべき男ではない……」
「何!?」
俺から拳銃を奪い自決しようとしたスコッチを止めた。困惑した顔のスコッチへ続けた。
「俺はFBIから潜入している赤井秀一……お前と同じ奴らに噛み付こうとしている犬だ……」
その言葉に目を見開いたスコッチ。驚くのも無理はないと思うが。
「さぁ、わかったら拳銃を離して俺の話を聞け……お前1人逃がすぐらい造作もないのだから……」
「あ、ああ……」
力が抜けた彼の手から拳銃を取り戻そうとした。
その時、聞こえた階段を駆け上がってきた足音に、拳銃から手を離し振り返った。直後に聞こえた発砲音と顔に飛んだ血。向き直るとズルズルと崩れ落ちるスコッチ。
そこで彼の胸のポケットの膨らみに気づき歩み寄った。手を伸ばしそこにあった物を取り出した。
なるほど……拳銃を奪ったのは……コレを壊す為だったのか。家族や仲間のデータが入っていたであろう……この携帯を……。
穴の空いた携帯を再びスコッチの胸へ戻し、彼の手から拳銃を抜いた。
同時に誰かがここへたどり着いた。
「裏切りには……制裁をもって答える……だったよな?」
振り返るとそこに立っていたのは……バーボン。スコッチの姿を見るなり慌てて駆け寄った。
肩を揺すって胸元に耳を当てるバーボンの姿に、なんとも言えない気持ちが湧き上がる。
「心臓の鼓動を聞いても無駄だ……死んでるよ……拳銃で心臓をブチ抜いてやったからな……」
「ライ……貴様……」
そこに浮かぶ憎悪の表情。バーボンはスコッチが自殺したことにすぐに気付くはずだ。だが、それを伝えれば彼も後を追うのではないか……そんな気がした。
踵を返し階段を下りた。スコッチを救えなかったことに後悔が押し寄せる。もっと早く気づいていたら……。
『ずいぶん時間がかかったじゃない』