第17章 制裁
―リボルバーのシリンダーを掴まれると人間の力でトリガーは引けなくなる
いつの任務の時だったかライが言っていた。
『どうして止めるの……?』
スコッチが自決しようとしていたのはわかる。でも、それをライが止めた理由がわからなかった。
また何かを話し始める2人。その様子に苛立ちライフルのトリガーに指をかける……しかし強ばりすぎてて引くことはできない気がする。奥歯がギリッと音を立てた。
『ライ……さっさと始末して』
私に……スコッチを殺させないで。
その時視界の隅に映った明るい色の髪。思わずスコープから目を離した。慌てたように階段を駆け上がっていく姿を見間違えるはずがない。
『バーボン……なんでここが……』
スコッチがNOCであることはまだ一部の幹部しか知らないはず。それならなぜバーボンはこの場所にたどり着いたのだろう……。
いや、今はスコッチの始末が先だ。そう思ってスコープに視線を戻す。
そこからのできごとは一瞬だった。
ライが階段の方を振り返る。おそらく足音が聞こえたのだろう。誰かを確認しようとしたのか、シリンダーから手を離した。
バンッ
銃声とともに崩れ落ちるスコッチの体。
そこへライが歩み寄り、スコッチの胸元に手を伸ばし手に取ったのは……
『……スマホ?』
まさかそれを壊すために自決を……?
ライはスマホを戻してスコッチの手から拳銃を奪う。それと同時にバーボンが屋上へついた。
スコッチの姿を見てかバーボンは一度足を止める。しかし、すぐ駆け寄り肩を揺り、胸元に耳を当てる。
それを眺めながらライフルをしまった。
あの2人の仲の良さは知っているつもりだったが……きっとバーボンに連絡をしたのはスコッチ自身だろう。最期の別れに間に合わなかったのは不憫だが仕方ない。最初から自決するつもりだったようだし。
ふと、以前のバーでの会話を思い出した。逃げられないと聞いた時のあの呆けた顔。もしかしたら、あの時既に自身の未来を考えていたのかもしれない。
なんとも言えない気持ちが湧き上がる。NOCを始末したという安心感はあるのに、どうしてこんなに胸に穴が空いたような感覚があるんだろう……。
ライが踵を返し階段をおりる姿を確認して私も下へ向かった。何を話していたのか、どうしてすぐ始末しなかったのか……聞きたいことがいくらかあるから。