第17章 制裁
『……スコッチが、NOC?』
単独での任務が終わって早々にかかってきたジンからの電話。無情すぎるその内容に、声を震わせないようにするので精一杯だった。
「ああ……公安からの鼠だ」
『そうなんだ』
「お前の感覚には反応しなかったか?」
『それ、あまり期待しないでって言ったんだけど。一緒にいても違和感なかったし、調べても何も出なかったし……』
嘘をついてしまった。ずっとその感覚はあったのに、目を逸らし続けた代償がこんなところにまわってくるなんて……それを言うわけにもいかない。
もしかしてバーボンもライもキールも……全員?この感覚が当たるのは2度目だし……そんな最悪な考えを無理矢理頭から追い出した。
『……私は何をすればいいの』
「始末はライに任せたが……もしあいつがしくじったら、2人まとめて殺れ」
『ライはNOCじゃないでしょ』
「鼠1匹仕留められねえヤツなんかいらねえよ」
『……それもそうだね』
指先が冷えていく感覚。敵は何人も始末したことがあるけど、組織内の人間に手をかけたことはない。平気で仲間を切り捨てるのも、仲が良いと知っている私にそれを指示するのも……ジンが怖かった。きっと電話越しで笑みを浮かべてる。
でも、スコッチはNOC。始末しなければ組織に危険が及ぶだろう。廃ビルに誘導すると聞き、そこの屋上がよく見える別のビルへ向かった。ライフルを担いで。
ライとスコッチとの任務が増えて狙撃にまわることが減った。それに対抗心を燃やして狙撃場に通ったのがこんなところで役に立つとは……。
モヤモヤした気持ちのまま狙撃の体勢を整えて2人が来るのを待った。
しばらくして階段を駆け上がってきた2人。スコープを覗くと焦った表情のスコッチと普段通り冷静そうなライ。
その時、スコッチがライに掴みかかった。それを躱し、ライがスコッチを投げた……いや、そうなるとわかったようにあえて投げられたように見える。再び向かい合った2人……スコッチの手には先程まではなかった拳銃。
なるほど、あれを奪うために……。
拳銃を向けられライは手を挙げた。何か話しているようだが流石に聞き取ることはできないし、口の動きで理解できるわけもない。
次の瞬間、スコッチは自身の胸に拳銃を突きつけた。それを認識するより早く、ライがリボルバーのシリンダーを掴んだ。