第15章 弁解と命令※
『っ……手、痛い』
腕を掴まれているせいか傷口がビリビリする。
「説明しろ」
込められた力は抜かれることなく言われる。その視線の鋭さに俯いた。
『……何を』
出た言葉は少し震えていた。聞きたいのは昨日のことだろうけど……。
「チッ……」
舌打ちの音に少し顔を上げる。目が合うと足が竦んで壁に体重を預けた。
「取引で何があった」
『……薬を打たれた』
「この手の傷は」
『効きめが強くて……理性飛びそうだったから咄嗟に……』
「全員始末したんだろうな」
『そんな余裕なかったよ……』
矢継ぎ早に問われる。言い訳なんて考える余裕はない。
「あいつに何された」
『あいつ……?ライのこと?』
そう言うと掴まれる力が強くなった。顔を先程より数段険しい気がする。
『えっと……』
半ば無理矢理だった気がしなくもないけど、触ってもらってなければもっとひどいことになってたと思うし……。
「言え」
『っ……少し……触ってもらっただけ……』
「少し?あいつは随分満足したようだが?」
『……知らないっ』
あいつ……ジンに何言ったの……しかも何でジンはそれを気にするの……?
「言え……どこをどう触られた?」
鼻先が当たるくらいの距離。目も逸らしようがない。
『く、首を舐められて……下触られた……だけ』
「……それが少しか?」
『少しでしょ……いっ……!』
突然の痛みに顔をしかめた。手の傷をなぞるようにジンの指が滑り、時々強く押される。
「フッ、いい顔だな」
『痛い……から、離して……』
「まだ終わってねえよ」
『……っ』
ジンを睨んでも手の動きは止まらない。口元にはいつもの笑みが浮かんでで、こんな状況を楽しんでるように見える。
……ここまでされても嫌いにならない私も馬鹿だと思うけど。
「昨日言ったあれ、どういう意味だ?」
『あれ……?』
心当たりがない。昨日のことを思い出そうとするけど、キスされて以降の記憶はないから……。
『ごめん……昨日のこと全然覚えてないの……』
「……」
『だから……気にさわるようなこと言ってたらごめん……』
「……覚えてるわけねえか」
ジンはほっとしたような、残念そうな……複雑な表情をしている。
「それなら……思い出させねえとな」
その言葉の意味を考える間もなく口が塞がれた。