第14章 苦しさよりも※
「そうか」
そう言ったライはどこかへ電話をかけ始めた。その会話を聞く余裕なんてなく、目を閉じた。まだ身体の奥の熱は冷めきってない。一度は引いたものの、再び増していく。
それでもあれで止めてくれてよかった。快感を求める身体は苦しいが、それよりも明美を裏切ることの方がよっぽど辛い。
バーボンかスコッチなら割り切れたのに……なぜこんな時に一緒なのがライなのだろう。
車が静かに動き出した。その振動にすら感じる身体が情けない。それに耐えるようにギュッと身体を抱きしめた……にしてもどうやって帰ろう……。
しばらくして車が止まった。目を開くとそこには見慣れない景色。待ち合わせた場所ではないし、アジトの近くでもない。
「悪いが少し待ってろ」
どこなのか聞く前にライが車を降りていく。外を見ようとしたけど怠くて動けない。それにもう身体が快感を求めている。ここまでどうにか耐えたけど、拷問と呼ぶに等しい時間だった。流石にライの前で自慰をするわけにもいかず……でも、もう無理。
身体へ手を伸ばしていく。こんなので治まるとも思わないけど、何もしないで我慢できるものじゃない。あと少しで触れる……その時横のドアが勢いよく開かれた。
驚いて思わず手を止める。誰なのかを確認しようと目を開ける前にフワっとタバコの匂いがした。この匂い……まさか……でも、なんで……。
『ジン……』
なんでここにいるの……。
口を開く前に横抱きにされる。
『ひあっ……』
身体がビクッと反応した。その反応にジンの目付きが鋭くなるのを感じる。
「詳しいことはそいつに聞いてくれ」
ライの言葉に何も言わず、ジンは歩き出した。そこでやっと気づく。先程ライが電話をかけた相手はジンで、ここはジンが泊まっているホテル。
部屋につくなりベッドへ投げられた。その上にジンが覆いかぶさってくる。
「説明しろ」
そう言われても身体が限界。ジンの首に腕をまわして引き寄せる。
『気持ちよくなりたい』
今はそれしか考えられない。ジンは舌打ちをした。しかし、そのまま口を塞がれる。ずっと欲しかったものを与えられ、でも身体はそれ以上を求める。
「……」
ジンが何か言った気がしたけど耳には届かない。次々と迫る快感に視界が白くぼやけて、思考は深く落ちていき……そこで記憶が途切れた。