第13章 帰宅と再開と……
「ずいぶん嬉しそうですね」
バーボンが話しかけてくる。
『まあね』
「誰と会うんだ?」
『秘密』
スコッチに聞かれるけど言う必要もないだろう。
『だから、申し訳ないけど……』
「夕方には戻るんだろ?この時間なら余裕だと思うがな」
察しが良くて助かる。この3人は無駄な説明が必要ないから楽。まあ、他のメンバーもそうなんだけど。
そこまで考えるとやっぱりジンのことが頭をよぎる。会わなくても思いが褪せることはない。自分も馬鹿だとつくづく思う。
「ころころ表情が変わりますね。悩みごとですか?」
『別に……』
「何かあるなら話聞くぞ?」
厚意なんだろうけど、話したところで何かが変わることもない。
『A secret makes a woman woman……ってね』
「女は秘密を着飾って美しくなる……か」
『素敵な言葉でしょ?貴方達が知る必要はないわ』
そう。まだ信じているわけじゃない。それなのに彼らがコードネームを得てから気が抜けることが多くなったかもしれない。
気をつけないと。組織やメンバーに危険が及ぶ前にそれを排除しなければ。私の居場所はここにしかないのだから。
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「それではお気をつけて」
最寄り駅についてバーボンとスコッチは別方向へ歩いていく。ライは途中まで同じ方向らしい。
『貴方、明美には会ってるの?』
「時々な。機会はかなり減ったが……この間妹を紹介された」
『なんだ、知ってるのね』
「これから会うんだろ?」
『そう。明日帰るらしいから』
先程の電話で気づいたのだろう。嘘をつく必要もないから肯定する。
「仲がいいんだな」
『まあね。共通点もいくつかあるし』
「親がいないことか?」
どれだけのことをこの男に話したのだろう……今度会ったら言っておかないと。
『……少し喋りすぎね』
「俺が聞いたんだ。あいつは悪くない」
『それなら……詮索は辞めて。貴方のこと信じているわけじゃない』
「なら何故なにもしない」
『明美のためよ。あの子を泣かせたら許さないわ』
明美がどれだけライに好意を寄せているかは時々の電話で十分理解している。毎回もたれるくらいの惚気。それを嬉しそうに話すあの子を傷つけたくないから。
「わかってるさ」
そう言ったライの背中を見送った。