第6章 水族館
「では、俺からプレゼントだ」
「え?」
よし、今だ。
水族館からずっとポケットに忍ばせておいたものを一つ、花里へ手渡す。
喜んでくれるといいが…
何と言われるだろうかとドキドキしながら、花里が袋を開けるのを見守った。
「なんだろう……、あ!これ、もしかして⁈」
「もしかして、だ」
袋の中身は、花里が買うのをやめたピンクのイルカのストラップ。
さっきの俺は、急いでこれを買っていたのだ。
「もらっていいんですか?」
「あぁ」
「嬉しい!ありがとうございます!」
かなり喜んで頂けたようだ。
予想以上の反応に、こちらも嬉しくなる。
「ちなみにだが」
「?」
「オレの分もある」
花里と同じ青いイルカを目の前に掲げると、びっくりしていたが、「お揃いですね!」と嬉しそうにはにかんだ。
「鞄につけて明日一緒に学校連れて行きますね」
「俺もそうしよう」
「そうしましょう!」
誰かとお揃いなんて、昔姉さんとTシャツをお揃いにした事があるくらいだ。
兄弟や友人のような、何かの証のようで、なんだかいいなと思っていると、
「なんか、こういうの…いいですね」
花里も、そうだと言ってくれて、嬉しくなった。
鬱陶しいかとも思ったが、こんなに喜んでもらえたので、買って来て良かった。
好きな子と同じ物を持つというのは、少し照れくさいが、嬉しいものだな。
花里には内緒だが。
「花里」
「はい、なんでしょう?」
「嫌なら構わないのだが…」
何故こんなにも、緊張するのだろうか。
たった一言「名前で呼びたい」そう言うだけでいいのに。
花里は首を傾げながら俺の言葉を待っている。
いつまでも待たせるわけにはいかない。
俺は意を決し、花里に細やかなお願いをしてみた。
「下の名前で呼んでも…いいだろうか?」
俺がそう言うと、花里は目を丸くして驚いていたが、
「はい、いいですよ!」
満面の笑みで、俺の願いを聞き入れてくれた。