第6章 水族館
錆兎に土産を渡し、いよいよ何もする事がなくなったので、このまま花里を家まで送る事になった。
「すみません、私緊張しちゃって」
「いや、なかなか自然と話せていた」
「本当ですか?良かった!じゃあ明日大丈夫かなぁ」
「あぁ、きっと大丈夫だ」
そんな話をしながら考える。
ここから花里の家まで数分。
…渡せるだろうか。
例のブツがポケットにある事を確認し、渡すタイミングを窺う。
…難しいな。
もたもたしている間に、着いてしまった。
花里の自宅に。
「今日はありがとうございました。楽しかったです」
「俺も楽しかった」
「良かった!また行きましょうね」
「あぁ、どこか行きたい所があれば言ってくれ。俺が連れて行く」
「やったぁ、嬉しいです!」
次は花里とどこへ行こうか。
考えるだけで楽しくなる。
次が待ち遠しいなと思っていると、「言ってなかったんですけど…」と花里が遠慮がちに話し始めた。
「今日蜜璃ちゃんが冨岡さんを誘ったの、私の為だったんです」
「それは初耳だ」
「はい、言ってないので」
そりゃそうだ。
驚きのカミングアウトで可笑しな返事をしてしまった。
「…と、いうのは?」
「あの…、明日からの学校が心配だって話を蜜璃ちゃんにしたら、『元気になれるように冨岡さんを呼ぼう!』という事になりました」
「なんと」
俺には他人を元気にするような力は備わってはいないが。
だが、そのために俺を選んでくれたと知ってとても嬉しく思う。
しかしその役目、俺で良かったのだろうか。
「何故俺なのか、聞いてもいいのか?」
そう聞いてみると、
「んー…、内緒です」
そこ一番聞きたいとこなんだが。
どうやら秘密にしておきたいらしい。
「今日は、元気になったか?」
「はい!とっても元気になりました。明日頑張れそうです!」
「ならば良かった」
満面の笑みで答える花里。
知りたい事は聞けなかったが、花里の元気が出たのならば良しとしよう。