第6章 水族館
そう言えば…
「イルカで思い出したが、姉もイルカが好きだった」
「そうなんですか⁈私お姉さんと気が合いそうです!」
仲間がいた!と嬉しそうに笑う花里。
きっと一緒に来ていたのなら、二人して目を輝かせて観ていたのではないだろうか。
そんな光景が想像出来て、なんだか微笑ましく思った。
それと同時に、少し寂しくなってしまった…。
「今度会ってみたいです!」
「…また、いつか…」
嘘を、ついてしまった
姉はもういないというのに…
純粋に、会いたいと言ってくれた花里に対して、胸がチクリと痛む。
弱くてごめん
心のどこかに残る淋しさが癒えるまで
いつか本当の事が言えるようになるその時まで
どうか待ってほしい
「…どうかしましたか?」
「いや、何でもない」
心配そうに覗き込む花里に、今出来る精一杯でなんとか微笑むと、花里は安心したように微笑み返してくれた。
痛んだ胸も、これだけで俺は癒された。
「結構人入ってきましたねー」
「そうだな。そろそろ始まるようだ」
話している間にどんどんと人が入っていたようだ。
観覧席はほぼ満席で、がやがやと騒がしい。
裏手にいたショーの目玉のイルカ達も、既に入って来ていたらしく、目の前の水槽の中で悠々と泳ぐ姿が見える。
やがて会場内に大音量の音楽が響き渡る。
ショーの始まりのアナウンスと共に、調教師とイルカ達が中央へとやって来た。
調教師のホイッスルを合図に、イルカ達が動き出す。
イルカがハイジャンプする度に、場内に歓声が沸き上がった。
「冨岡さんっ、今の見ました⁈すごいですねぇ!」
目をキラキラさせイルカに夢中になる花里は、まるで無邪気な子供のようで…
可愛らしくて、愛おしいと思った。
花里が笑い掛けてくれると嬉しい
他の奴が花里の名前を呼ぶとモヤモヤする
花里が何をしていても可愛いと思う
俺がおかしくなったのだと思っていた
どうやらそうではなかったのだ
今日伊黒に話した時に、気づいてしまった
俺は…
花里が好きだ