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君に出逢えて、恋をして 【鬼滅の刃 冨岡義勇】

第5章 あの時…



「分かった、話をする。要らぬ心配をさせたな。悪かった」


伊黒は花里を安心させる様に目元を和らげる。


「ううん。ありがと、伊黒さん」


それを見て、花里も少し微笑んだ。


「蜜璃、すまないが、柚葉とここで待っていてくれるか?」

「分かったわ小芭内さん。柚葉ちゃん、一緒に待ってましょ」

「うん。冨岡さん、ファイトです!」


花里が俺に頑張れとガッツポーズで応援してくれた。
頑張れそうだ。


「行くぞ冨岡」


甘露寺と花里をその場に残し、俺は先に行ってしまった伊黒の後を追う。
少し行った所の通路で止まり、端に寄った。

一先ず話を聞いてくれる所まで漕ぎ着けたが…
それから俺は何と言っていいか分からず、伊黒も何も言い出さないので、暫く沈黙が続く。

すると伊黒は、はぁぁーっと先程よりも大きく盛大な溜息を吐き、やっとその重い口を開いた。


「それで、貴様の話したい事とは何だ」

「…お前が、本当に怒っている理由を知りたい」


いよいよ聞いてしまったが、本当に答えてくれるだろうか。
俺は緊張で汗の滲む拳を握る。


「…それは自分で考えろ」


…やはり、教えてはくれない。
また、振り出しに戻ってしまった。

何故俺は、こんなにも人の気持ちに疎いのか。
とことん自分が嫌になる。

何か言わなければと思えば思うほど、頭が真っ白だ。
そもそも、俺が分かっていないのだから言葉なんか出るわけがない。

こうしているうちに、伊黒が嫌気がさして帰ってしまいそうだ。
背中に嫌な汗が伝った。

その時…


「…冨岡、よく思い出せ。あの時の事を」

「あの時…」

「“俺はお前達とは違う“と言った、その後の事だ」


伊黒がついにヒントをくれたのだ。
つい嬉しくなってしまったが、まだ終わりは見えていない。
言われた通り、あの時の事を懸命に思い出す。


「あの後、俺は1人家に帰ってしまった。その後錆兎がうちに来て、俺の気持ちを話して聞かせた」

「それから?」

「それから…、錆兎がお前達の所へ行って、俺の気持ちを伝えてくれた」

「そうだ。その時俺は怒った。何故だか分かるか?」

「……」


俺に質問する伊黒の声は、怒気を孕んではいなかったものの、少し切なく、悲しみを帯びているように感じた。




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