第5章 あの時…
「伊黒の事は、どうにかしたいと思ってはいるのだが…」
「喧嘩しちゃったんですか?」
「あぁ、もう随分前だがな」
「拗れちゃったんですね」
「俺のせいだ」
「そうなんですか?」
「あぁ、昔……いや、やめておく」
「…冨岡さん、モヤモヤしてますか?」
「……」
口下手な俺があれこれ言葉を紡いでも、伝わらないどころか言い訳にしか聞こえないだろう。
そうなると、余計に彼奴をイラつかせてしまう。
そう思ったら、どうしていいのか分からないのだ。
花里は少し考えてから、俺に向き直りこう言った。
「あの時…溜め込むより吐き出した方がいいって言ってくれたの、私すごく嬉しかったですよ。だから、今度は私が聞いてあげます」
花里はそう言うと、俺に微笑んだ。
確かに以前俺が言った言葉だ。
今度はお前がそうしてくれるのか。
ならば少しだけ……話してみても、良いだろうか……
「ありがとう」
花里に感謝の言葉を述べてから、俺は話始めた。
「もう7年程前になる」
「随分拗らせましたね…」
「……」
確かに。
随分長い間拗らせたもんだ。
「…俺達が中学3年の時だった。学期末で進級試験があるからと、俺と錆兎、それから不死川と伊黒の4人で一緒に図書館で試験勉強をしていたんだ。因みに錆兎は俺の幼馴染、不死川は同じクラスの同級生だ」
「その頃は、伊黒さんとも仲は良かったんですね」
「そうだな」
一緒に勉強をするくらいだ。
それなりに仲は良かったと思う。
「始めは良かった。分からない所はすぐ聞けるし、同じ仲間同士切磋琢磨して頑張ろうと思えた。だが、他の3人は学年10位以内に入る秀才だ。本来なら俺はこの中に入るべき人間ではないと思っていた」
「そんなこと…」
そんな事ない。
花里もそう思ってくれるのか。
俺も、今なら分かる。
当時誰1人としてそんな事、思ってもいなかったのだから。
皆友人として、仲間として、ちゃんと俺を迎え入れてくれていたのだ。
それなのに…