第4章 気付いた恋心
「ねぇ柚葉ちゃん」
「なぁに?」
「冨岡さんには言わないの?」
「…うん、言わない」
言わないより、言えないかな。
ずっと蔑まれてきた私が誰かを想うことなんて、いいと思えなくて。
もし仮に私の気持ちが言えるような日が来たとしても、嫌がられたらどうしよう。
嫌われていたらどうしよう。
もうそれしか浮かばなくて、怖いのだ。
だから私からなんて、とてもじゃないけど…言えない。
「そんなの違うわ!」
蜜璃ちゃんは突然ガターンッと椅子をひっくり返して立ち上がり此方へやってくると、私をぎゅーっと抱きしめた。
「蜜璃ちゃんっ?どうし…」
「誰にだって…想ったり、想われる権利があるのよ。大丈夫、もっと自信持って。ね?」
そう言って、蜜璃ちゃんはよしよしと私の頭を撫でてくれた。
「ありがとう蜜璃ちゃん…」
「それにね!私怒ってるのよ!」
「へ?」
見ると、蜜璃ちゃんは本当にプンスカと腹を立てている模様。
「柚葉ちゃんをこんなになるまで追い詰めた子達に!もし今度会ったらただじゃおかないんだから!お説教してやるわ!小芭内さんみたいに!!」
伊黒さんみたいに…
締め上げるって言ってたけど。
蜜璃ちゃんがやるの?
…想像できない…
でも、こんな風に怒ってくれる人がいて、私は幸せだと思った。
「大丈夫大丈夫!お姉さんが何とかするからね!」
あーでもないこーでもないと何やら考えてくれている。
その間ずっと私の頭を撫で回していた。
「蜜璃ちゃん髪がくしゃ「そーだわ!!」
私の言葉を遮るかのように蜜璃ちゃんが大声を出した。
何かいい事思いついた?
部屋を飛び出した蜜璃ちゃんは、バタバタと何処かへ行った後また慌ただしく戻ってきた。
「はいこれ!」
「チケット?」
手渡されたのは、水族館のチケット。
「商店街の福引で当てたの!3枚入っててね。2枚は私と小芭内さんで使おうと思ってるんだけど、残り1枚あるから柚葉ちゃん一緒に行きましょう!」
「いいの?でもデートだったんじゃ…」
「大丈夫!小芭内さんに言っておくわ!」
伊黒さんごめんなさい。
でも私蜜璃ちゃんに言われたら断れないよ。