第3章 再会
玄関から送り出す時に、さっき出した煉獄からもらった土産も持たせた。
「これをくれた友人はさつまいもを食べる時口からわっしょいが出るんだ」と教えてやると、「なんですかそれ!」と可笑しそうに笑っていた。
見送った後誰もいなくなったリビングへ戻ると、いつもと同じ静寂が、いつも以上に酷く感じられた。
少し寂しいと思ったのは、さっきの時間が俺にとってとても楽しく感じられたからかもしれない。
心地良いとさえ思った。
先程の連絡先を交換した際、「メールしてもいいですか?」と遠慮がちに聞いてくるので、「いつでも連絡してくれて構わない」と言うと、嬉しそうに笑っていた。
花里がこっそりと呟いた「やったぁ!」が、俺の耳にはしっかりと届いていて。
しばらく耳から離れないだろう。
無邪気で可愛いらしかった。
「…腹が空いた」
胸は満たされていたが腹の中までは満たせない。
とりあえず何か食べるかとキッチンへと足を運んだ。
昼御飯を食べながら、本来あったはずの錆兎との約束を思い出す。
錆兎の消防士の二次試験と、俺の教員試験が来月に控えているので、その対策と激励会をしようと言っていたのだ。
錆兎が。
午後なら時間がある。
昼御飯を食べたら後で錆兎の家に行ってみようと、とりあえず目の前の飯を腹に詰め込んだ。
「あれ?義勇用事終わったのか?」
「あぁ」
錆兎の家のインターホンを鳴らしたら、錆兎が出てきた。
当たり前だが。
「まぁ上がれよ」といつもの様に促され、いつもの様に錆兎の部屋に通される。
一旦部屋を出た錆兎。
暫くすると、飲み物と菓子を持って戻って来た。
「食う?ハバネロ」
「口から火が出るぞ」
「ははっ。悪い、今これしかないんだ」
腹は空いていなかったが錆兎がせっかく持ってきてくれたので、辛いと噂のハバネロチップスを食べてみる。
「…辛い」
口の中がピリピリする。
だが思ったほどの辛さではなかった。
「げほっ…!…俺無理!」
意外と辛いものが苦手な錆兎はギブアップだった。
何故買ってきたのだろうか…。