第2章 きっとこれは恋じゃない
「柚葉……そいつの……下の名前は?」
伊黒さん、すっごく嫌そう…
でもちゃんと聞いてくれるんだ。
どうしよう、でもここまで来てやめたらきっと後悔するだろうし…
私は伊黒さんの無言の訴えを見なかった事にして、その下の名前も口にした。
「“義勇“…」
それを聞いた蜜璃ちゃんは「きゃー‼︎やっぱりねぇ‼︎」と大喜び。
伊黒さんは白目を剥いてそのまま固まってしまった。
「柚葉ちゃん!その人なら私達知ってるわ!」
「ほんとに?同姓同名とかじゃない⁈」
「冨岡さんのお名前って結構珍しいでしょう?きっと探してもなかなかいないと思うの。だからね、大丈夫よ!」
「本当?」
「ええ!………多分!」
ちょっと間があったけど、蜜璃ちゃんがそう言うならそうなのかな。
確かに「義勇」はなかなかいないんじゃないかと私も思う。
半信半疑だったけれど、段々私もそうかもしれないと思えてきた。
はしゃぐ私達とは正反対に、伊黒さんはなんだか絶望的な空気を纏っていた。
「待ってくれ…本当に冨岡なのか?…あの冨岡で間違い無いのか⁈他に何か情報は無いか?何でもいい、何か思い出せる事はないか?」
伊黒さんはどうしてもその人だと認めたくないらしい。
蜜璃ちゃんさっき知り合いって言ってたけど、伊黒さんの反応から察するに、友達とかではないんだろうなと思う。
ほんとに嫌そう…
そしてあとひとつ思い出した事があるんだけど…
これ言っていいやつかな?
「ぇえと…、そう言えば教師を目指してるとか言ってたよ?」
トドメを刺してしまったみたいだ…
「教師を目指してる」が決定的だったみたいで、肩をガックリと落としながら、それが自分の知る“冨岡“だと渋々認めた。
「教師を目指してるのか…。そうか、そうだな。間違いない…アイツだ…」
「良かったわねぇ柚葉ちゃん!これで会えるわねぇ!」
蜜璃ちゃんは自分の事のように嬉しがってくれて、またぎゅうぎゅうっと抱きしめられた。
お、お胸が…