第2章 きっとこれは恋じゃない
「ぇえ〜と…、一応聞くんだけれど、柚葉ちゃん、その人とは連絡のやり取りはしてるの?」
「ううん、してない。聞くの忘れちゃったから。お家の場所も何も知らないの」
「あらまぁ!どうしましょう小芭内さん!」
伊黒さんは頭痛そうに頭を抱えてしまった。
悩ませちゃった。
どうしよう…
「でも、柚葉ちゃん会いたいのよね?」
「うん。でも分からなければそれでいいよ?私自分で探してみるし」
「お家とかも分からないのよね?それじゃあ大変じゃないかしら」
…確かに。
近くに住んでいるということは分かっているけれど、果たしてどの程度のご近所さんなのか。
というか、私どうやって探そうとしているんだろう。
しらみつぶしに一軒ずつあたってみるとか?
気が遠くなりそうだなぁ…
どうしようかな…と考えあぐねていると、
「……分かった、何とかしよう」
兄貴からの頼もしい返事が。
「小芭内さん!素敵!」
こんな無茶振りを引き受けてくれるなんて。
ほんとに、頼りになるお兄様だ。
と言うわけで、私の我が儘による人探しが始まった。
…見つかるといいけど…
「柚葉、まずそいつの名前は何と言うんだ?」
「えっと…“冨岡さん“」
「えっ⁈」
「……」
蜜璃ちゃんは驚き、伊黒さんは固まった。
どうした?
「柚葉ちゃん!私達の知り合いにもね、冨岡さんているのよ!」
「ほんと⁈その人⁈」
「いや、待て。まだそいつか分からない。何か他に情報はないか?」
「大学4年って言ってた」
すると蜜璃ちゃんが段々と興奮してきた。
「小芭内さん小芭内さん!大学4年の冨岡さんてっ、やっぱりそうじゃないかしら⁈」
「いや、冨岡という苗字は別に珍しいものでもない。“大学4年の冨岡“だけなら探せばいくらでもいるだろう。それより柚葉、どこの大学か聞いたか?」
「あ、聞いてない…。でもね、お家はこの辺て言ってたの。大学も近くなのかなぁ?ちょっとそこは分からないや」
「ほらほら!この辺のお家の大学4年の冨岡さん!絶対そうよ!」
蜜璃ちゃんの目が期待に満ち溢れている。
もしかして、ゴール見えてきた?
でも逆に伊黒さんの顔が険しくなってきている。
「頼むから違っていてくれ」と言っているような…
この違いは何かな?