第1章 出逢い
「たまたまつけたテレビでやっていた」
「はい」
「で、俺もやってみたくなって、さび…友人と松ぼっくりを拾いに行って、自宅でやってみた」
「…どうでした?」
「アレはなかなか時間のかかるものなのだな。3時間かかったが、ちゃんと閉じて、感動した」
自然とは、不思議なものだ。
錆兎も最初こそ乗り気じゃなかったが、「どうせならデカいのにしよう」と本気でドデカ松ぼっくりを探していた。
残念ながら見つからなかったがな。
花里はうんうんと頷き、終始にこにこしながら聞いてくれた。
俺のささやかな感動を呆れる事なく聞いてくれて、俺は嬉しい。
「因みにそれはいつの話ですか?」
「大学3年だ」
「・・・?!」
花里が…すごい顔をした。
そう、これをやったのは去年の話。
最近の話はやめておこうと思ったばかりだというのに…
割と最近だった。
そしてこの表情から察するに、いい歳して何やってんだと思っているに違いない。
あぁ、失敗した。
さっきの俺よ、何故この話?
もっといい話があっただろう?と自らに疑問を投げかけていると…
「…ふふ……ふふふっ……あはははっ!」
「!」
突然花里が思いっきり笑い出した。
どうしたのだろう。
ワライタケでも食べていたのだろうか。
「ごめんなさいっ!…でも、大学生なのに…ふふっ…松ぼっくりが、なんか可愛くて…あははっ!」
笑いながら、微妙に失礼な事を言われた気がする…
だが、お腹を抱えて笑う花里はとても楽しそうで、そんなのを見ていたら怒る気にはなれず、こちらまで釣られて笑ってしまいそうだった。
一頻り笑った後、ハー、ハー、と呼吸を整える花里に「大丈夫か?」と声を掛ける。
「はい、こんなに笑ったの久しぶりです!ありがとうございます!」
「そうか、松ぼっくりならその辺にいくらでも落ちている。良かったらやってみるといい」
「ふふふっ…はい!」
素直な返事に可愛らしさを感じる。
それに、やっぱり花里は、笑顔の似合う女の子だと思った。