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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第65章 年越しは3つの日輪と 〜another story〜✳︎✳︎



5分後、目当ての品が無事私達4人の元にやって来る。

「お待たせしました!年明けうどん4人前です」

先程お店の中に入店するよう促してくれた彼女が持って来た。
「皆さんで丁度50個目です。幸先の良い始まりですね」

配膳をしながら、こっそりと告げた店員さんは「ごゆっくりどうぞ」と頭を綺麗に下げてまた忙しなく店内のお客さんの対応に向かって行った。

「いただきます!!!!」

やっぱり煉獄家のみんなは持っているなあ。
私は改めてそれを感じつつ、割り箸をパチンと2つに割ってうどんを食べ始めた。


「んー。おつゆが美味しいです!これ、昆布だしですね」
「ほう、七瀬さんは昆布だしが好みか」

「そうですね、どちらかと言えば。私の母が九州の出身だったのでうどんと言えば昆布だしの印象が強くて……」



一応説明しておこう。
東日本の蕎麦うどんに使われている出汁は、基本的に鰹だしである。だからおつゆの色は黒っぽい茶色だ。

しかし、西日本は勝手が違い、昆布だしを使用する店が多い。おつゆの色は透き通っている茶色である。
今私達4人が食べているうどんのおつゆが正にこれにあたる。

真っ白なうどんの上の真ん中にはやや大きめの梅干しがのっており、その上には右向きにのせられている海老天の尻尾部分が器から少しはみ出している。

そして梅干しの左下に小口切りにした青ネギ、右下には5ミリ幅に切ってある紅白かまぼこが彩りを加える一品だ。



「梅干しを初日の出に見立てているのですね。画期的な手法です!姉上、来年は我が家でもこれを作りましょう」

嬉々とした表情で「おいしい」を連発する千寿郎くんは、年明けうどんが大層お気に召したらしい。「そう言えば……」と彼は思い出したようにこう続ける。


「俺、ずっと気になっていた事があるんです。どうして食事処の大将は男性ばかりなんでしょうか。通常料理と言うと、女性が作る事が多いなあと言う印象ですが……」

「確かにそうだな。言われてみれば男ばかりだ。杏寿郎、お前何か知っているか?」

「いえ、俺もそこまで考えた事はなかったです。うまい物はうまいと。食事する時はそれだけしか思いつかず……」



あっという間にうどんを食べ終えた杏寿郎さんは、おつゆまで飲み干し、空になった器を凝視しながらうーむと顎に手をあてて思案し始める。

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