第57章 緋星(あけぼし)喰われしその時に、心炎で天蠍を衝け ✴︎✴︎
4人で石室内に入って来た。私と炭治郎が前を、柱の杏寿郎さんと冨岡さんは後ろを歩いている。
首塚と聞いてやはり怖さが先行していたけれど、とても綺麗な石室で私はびっくりしてしまった。天井も高めで、左右の石壁は人が2人並んで歩いても1メートルの余裕があり、圧迫感を感じない。
それは炭治郎も同じだったようで、”へー”や”しっかりした造りだなー”と驚きつつも感心している。
「あ、あの石塚がそうですか?綺麗に手入れされていますね」
手持ちの松明を右手に持った炭治郎が、入り口から5メートル程先に進んだ所にある将門塚を照らしてくれる。
「1ヶ月に一度は隠の当番に当たった者が2人1組で掃除をしてくれているようだぞ」
「なるほど、これなら将門公も嬉しいでしょうね。私、ここに来るまでずっと怖い所だと誤解してました……」
「祟り等の伝承もありはするが、神田明神には”除災厄除の神様”として祀られているからな」
杏寿郎さんが教えてくれる情報を聞きながら、また私と炭治郎は”へえ”やら”凄い”などなど感嘆の声を上げてしまった。
「よし、まず将門公に挨拶をしておこう」
「あ、そうですよね」
私達4人は塚の前に横一列に並び、まずは一礼をする。そして目を瞑って自分の名前、担当する柱の方角を心の中で呟く。これらは私があまね様から頂いた文の中に書いてあったしきたりだ。
因みに塚の周辺には見張りの任も兼ねて、宇髄さんと数人の隊士が待機してくれている。
私が目を開けると、3人は既に挨拶が終わっていたようで皆が自分の方を見ていて少し恥ずかしかった。
「煉獄。周る順番は北が最初で、西が最後だったな?」
それまで黙っていた冨岡さんがようやく石室内に入って口を開く。
「ああ、そうだ」
「中に入っても、始まりは炎なんですね」
「確かに!言われてみればそうだな……」
三度(みたび)感心する炭治郎に、気持ちと体の強張りが綻ぶ。
「———では参るぞ」
まずは北の柱の再建からだ。杏寿郎さんが先頭になり、炭治郎、私、冨岡さんの順番で奥に進んでいった。