第17章 薬を作る
「…でもよく考えたら、死んだ方が良かったかもな…。」
レンは薬研を見る。
「…俺たちは何度でも新しく顕現する。綺麗さっぱり辛いこと忘れて生きなおした方が、幸せだったんじゃないかとも思う。」
薬研はぽつりと呟いた。
燭台切はその言葉に息を呑む。彼の脳裏に傷だらけの太鼓鐘が過った。
「…”生きろ”って色んな意味があると思うけど、希望なんじゃないか?」
「希望、ですか?」
「そう、希望。生きて幸せに、も一つの希望だ。俺の代わりに生きろ、もそうだ。
だってそいつの未来に自分の希望を乗せてるんだから。少なくても俺は、そう思う…。
…大将の友達を知らないから何とも言えないが…、その人はきっと、大将に希望を託したかったんじゃないか?」
「希望を、託す…。」
また厨に沈黙が戻る。
不意にレンの中にリヨクの言葉が蘇る。
『俺の夢は強い忍になること。強い忍になって役に立つ。』
今のレンは強い。
少しはリヨクに報いることができているかもしれない、とレンは心が少し軽くなった気がした。
薬研と燭台切はレンの雰囲気が柔らかくなったことに気がついた。彼女をそっと見ると、僅かに微笑んでいた。