第73章 忍界大戦6
それを聞いた鶴丸は、ふっと笑った。
向こうにいた頃は、人間を救うことに少なからず疑問があった。
命を賭して時間遡行軍と戦うことに何の意味があるのか、と。
けれど今は、助けることも悪くはないと思う。
それは、人と同じ土俵に立ち、共に戦い、時に感謝をされる。そういった経験を重ねたからだ。
付喪神と言えど人と同じ感情を持つならば、やはり人として当たり前にある”感謝”や”賛辞”が士気に繋がり、原動力となるものだ。
情けは人の為ならず。
それはこういうことを言うのだろうな、と鶴丸は密かに思う。
「おっと、そうだったな。兵糧丸、兵糧丸と…。」
シカクは食料箱を探しに行く。
「ありがとう。俺からも礼を言わせてくれ。」
「君達のお陰で俺達は、まだ戦うことが出来る。」
「お前達が戻ってくれて良かった。」
シカクが退いたことで空いた空間に、次々と他の忍達が集まってきた。
「あ、あぁ…。」
薬研も戸惑いつつ、礼を受ける。
大部分は鶴丸の功績だ。
自分は何もしていない、という後ろめたさが薬研を気遅れさせる。
それを見た鶴丸は、ふっと息をつくと微苦笑を浮かべた。
「一緒に胸を張れ。キミ達がいたから俺は力が出せたんだから。」
そう言って、軽く薬研の肩を叩く。
薬研は少し困ったように笑いながら頬を掻いた。
「…ありがとう、旦那。」
「なに。礼には及ばないさ。」
鶴丸がにっと笑うと、薬研も穏やかに笑った。