第73章 忍界大戦6
その後は、敵方が勘違いしているのか、諦めたのか、爆弾が降ってくることはなかった。
鶴丸が動けなくなったレンを背負い、4人は本部の中へと入って行く。
道中、シカクは尾獣玉を止めた経緯を鶴丸達から聞き出していた。
「…大丈夫か?」
レンは鶴丸の背中でぐったりと伸びていた。
「体に力が入りません…。」
「よくそんなにチャクラを絞り出せるな。」
シカクは感心しながらレンを見る。
「普通はこんなになるまで神気は出せないのか?」
「そうだな。動けなくなるまで、ってのは中々ないな。その前に必ずチャクラが出せなくなるんじゃないか?」
薬研の問いに、シカクは今までの記憶を引っ張り出して答えた。
そんな話をしている内に、戦争前に連れてこられた広間へと着いた。
「シカクさん、何があったんですか?」
入口近くに待機していた一人が、シカクに尋ねた。
「あの尾獣玉な、こいつ等が止めてくれたんだとさ。剣で薙ぎ払ったら弾き返すことが出来たんだと。」
その言葉に、広間に騒めきが広まる。
「あんなものどうやって…。」
「ありえない…。」
そんな声がちらほらと上がった。
「それでも、完全には跳ね返せなかったみたいでな。そこの広場が抉れてたよ。」
シカクが補足すると、いのいちと青が歩み寄る。
「よくやってくれたな。お陰で命拾いしたよ。」
「若いのにやるな。助かったぞ。」
2人は和やかに笑った。
レンは、鶴丸の背から向こうを覗き見る。
本部の者に纏わりついていた黒い靄は、今は綺麗さっぱり無くなっていた。
やはり、あれは死の気配なのか、とレンは思う。
そして、その死因を取り除くことで死の気配は消えるのだ。
「戻った甲斐がありましたね。」
レンは、鶴丸にしか聞こえないくらい小さな声で呟いた。