第73章 忍界大戦6
一方、レンはあの時の状況を冷静に思い出す。
一斉に自分に向けられた刃。
避けきれない危機的状況。
もう忍術を使うしか手がないと思った時だった。
かつてない激しい怒りを纏った鶴丸が斬撃を放ったのだ。
感じたのは、膨れ上がる怒気と神気。
それが剣に乗せ、放たれたとしたら…。
レンはすっとクナイを取り出すと、切先を自身の喉元に向ける。
すると、2人が息を呑むのが分かった。
と、同時に鶴丸の神気が揺れ動く。
「何するんだ!!」
驚いた鶴丸が怒鳴った。
「あの時は私の生命の危機でした。鶴さんは私が傷つけられるのが我慢ならなかった。違いますか?」
レンの言葉に鶴丸はその時の感情を思い出す。
『主を害する者は許さない。何人たりとも!!』
そう叫ぶと同時に、自身の中の何かが膨れ上がり、爆ぜた。
鶴丸は自身の手を見た。
あの時の感覚の記憶を必死でなぞる。
「……!来ます!」
レンの研ぎ澄まされた感覚が、殺気にも似た爆弾の気配を捉えた。
レンはクナイをしまうと、すぐ様鶴丸の背に回り、ありったけの神気を流し始める。
「もう迷ってられません。ぶっつけ本番です。正真正銘あなたが砦です。」
鶴丸は不安気にレンを振り返る。