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君に届くまで

第17章 薬を作る


そんなこんなで、かなり時間がかかると覚悟してかかった薬草取りはあっけなく終わり、一度戻ることになった。

厨に行くと燭台切が米を炊いているところだった。
今日のお昼はおにぎりだろうか。

「あれ、随分早かったね。もっとかかるって言ってなかったかい?」

その言葉を受けて、薬研は遠い目をする。

「大将が大活躍でな…。あっという間に終わったんだ。」

想像がついたのか、燭台切は苦笑する。

「まぁ、レンちゃんだからね。”いろいろ規格外”だったでしょ。」

「旦那が行く前に言ってたことが今漸くわかったぜ。」

薬研はやれやれ、とため息をつき、レンは怪訝な顔をした。










ぱちぱち…ぱち…
ぐつぐつぐつ…
トントントン…

厨に薬を作る音が響く。黙々と作業する工程をレンは黙って見ていた。
慣れているのか、手際が良く、迷いがない。
レンが来る前も作っていたのだろうか、五虎退や乱の為に。
それには玉鋼が入ってなかっただろうから治らなかっただろう。

治らないと分かっている薬を作り続けるのは、どんな気持ちだったのだろう。

「ずっと、作ってきたんですか?この薬。」

レンは不謹慎だと分かっていても聞かずにはいられなかった。
薬研は苦笑する。

「まぁな。治らないとわかっていても出来ることなら何でもやった。やりたかったんだ。」

薬研は手を止めることなく、続ける。

「…どうして、五虎退を庇ったんですか?」

薬研は目を瞠ってレンを見る。

「レンちゃん。」

燭台切はその様子を見てレンを嗜めた。

「五虎退に話を聞いた時から…聞いてみたかったんです。」

レンの様子に2人は言葉を無くす。

ヒヤリとする空気に影の差した瞳。
あの夜と同じだと燭台切は思う。

薬研はまた手を動かしながら暫く考える。

厨にまた薬を作る音が響く。
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