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君に届くまで

第17章 薬を作る


薬研はレンの背中から、上側に目を向ける。下はとてもじゃないが見る気がしなかった。

枝の先を見ると、木の実らしきものがあった。

「あれがそうかもしれない。」

薬研は、枝の先を指さした。
木の実は枝の最先端についている様だった。ただ、足場はとてつもなく悪い。人間が乗ったらたちまち折れてしまうだろう。
レンは少し考えた後、影分身を出した。

初めて見る薬研は思う。
もう驚いたら負けだ、と。

影分身は先端までそろりそろりと移動する。途中でぎしり、ぎしり、と嫌な音が響く。
薬研は手に汗握りながらその様子を見守った。
あと少しで一番手前の実に手が届く、という所で、バキバキバキと嫌な音が響き渡る。

「落ちる…!」

それから影分身が乗った枝ごと、途中でぽっきり割れて落ちてしまう。

「…ダメですね。近づけません。とりあえず、一度降ります。捕まっててくださいね。」

そう言うと同時に文字通り、落ちた。
薬研は危うく絶叫しそうになり、歯を食いしばる。
レンはそっと薬研を下ろすと、彼はその場でへなへなと座り込んでしまった。

「…大丈夫ですか?」

大丈夫なものか。危うく大声で叫びそうになった。
人間技じゃない…!
薬研は、そう思いながらも黙って頷く。

「さっき、落ちた枝です。どれがそうですか?」

レンは、自身の身長程もある大きな枝を引き摺らないように気をつけながら、薬研に見せる。

「…うん。状態がいいものばかりだ。ほら、こういう風に、赤から緑に変わりかけている奴が一番状態が良いものなんだ。」

薬研はそう言いながら、レンに取った実を見せる。

ー成程、緑でもない赤に近い色がいいのか。

「覚えました。少し登ってきます。」

レンそう言って、スタスタとまた登って行ってしまった。
その間、薬研は取れる実を取っていく。

レンが登った木が時折揺れては、静まる。
大丈夫だろうか、と心配になり立ち上がった時、タン、タンと小気味の良い音が聞こえてきて、レンが現れた。
ある程度の高さまで来ると、そのままストンと殆ど足音が無いまま着地する。
薬研は呆気に取られて見ていると、

「これで良いですか?」

と小さめの麻袋いっぱいに詰め込んだ木の実を見せた。

「あぁ…。」

薬研は呆然とし、言葉が出なかった。
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