第73章 忍界大戦6
どれくらい走ったのだろうか。
雨が段々と小さくなり、やがて空に月が顔を出した。
見事な満月だ。
「この世界の月って、随分と大きいんだな。」
薬研は空を見上げて、ぽつりと呟いた。
「…何だかこの状況で見ると、月も不気味に映るものだな…。」
鶴丸も空を見上げて呟いた。
いつもなら、こんな綺麗な月がかかっていれば、飲めや騒げやとどんちゃん騒ぎになるのだろうが、今はそんな気には到底なれない。
常だったら十分な明かり取りになり得るのだが、今はその細々とした月明かりは酷く心許ない。
それもこれも、戦時中が故だからだ。
「…考えたらきっと…、ダメなんだと思います…。」
こんな時に、感情が無い方が正常な判断が出来るのだろう。
なんて、ふと思ってしまった。
忍は感情を持たない方がいい、という説が多々あるのはそのせいなのだろう。
けれど、レンはもう知りつつある。
感情が無いという世界がいかにつまらない世界であるかを。
感情があるからこそ、世界は色が溢れ、輝きに満ちる。
ーけれども今は。
今だけは。
「…今は戦時中です。恐れは一瞬の判断を鈍らせる。余計なことを考えずに行きましょう。」
3人は黙々とひた走って行った。