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君に届くまで

第72章 忍界大戦5



時刻は日の出前。



辺りは薄らと日の光が届き、篝火を必要としないくらいには視界が開けてきていた。

レンは、怪我人が集められた広場を遠目から眺めている。
そこからは、多数の黒い靄が立ち込めていた。
今までで一番濃く、昏い靄だ。
だが、邪気の気配とはまた違う。
あれ程似ているのに、嫌な感じは一切ないのだ。

邪気擬きなのだろう。

そうは思うが、レンは血を見ることが出来ないが故に確かめにいくことが出来ない。

「邪気擬きが気になるなら、俺が様子を見てこようか?」

薬研が控えめに尋ねるが、レンは首を横に振る。

「ダメです。それで万が一白い奴が混じっていて、ソイツに後ろを取られでもしたら目も当てられません。」

「でも気になるんだろ?俺達だって、邪気くらいなら分かるぞ?」

鶴丸は、じっと向こうを見るレンに言うも、彼女は鶴丸をちらりと見ただけで、また向こうに視線を向けてしまう。

「…邪気擬きが濃くなってるのが気になるんです。」

邪気と邪気擬きの違い。
それがレンには、目下気になるところだ。

「さっきも言ってたわよね。邪気擬きって。」

隣から声がしてそちらを向くと、いのがレンの隣に並んだ。
その視線には、教えてくれるのだろう?という意図が透けて見える。

レンは返答に詰まった。
邪気擬きとは何か。それは正に今、探っている最中であり、確証が得られていないあやふやなものだからだ。

「…邪気は、気持ち悪い気配で黒い靄です。邪気擬きはただの黒い靄でした。」

「”でした”?」

いのはその言い回しに首を傾げる。
その言い方は今し方知ったようにも聞こえる。

「私もこちらに戻ってから発見したんで、黒い靄に何で種類があるのか分からないんです。」

とは言っても、既に大体の予想はついている。
後はその確証がほしいだけだ。

「で、それがあっちの方から見えてるのね。」

いのが聞くと、レンは、はい、と答えながら再び広場に視線を向ける。
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