第72章 忍界大戦5
その工程を陣営全てで行い、片が付いたのは明け方近い頃だった。
レン達が一息ついていると、後ろから声をかけられた。
「なぁ。あんた、もしかして木の葉の雪女(ゆきめ)か?」
レンが後ろを振り返ると、十数人程の男達が立っていた。お里は様々で、霧もいれば土もいるし、砂もいれば雲もいる。
共通して言えるのは、皆が皆、彼女を見て目を輝かせていたということ。
レンは思わずぎょっとする。
「…あの、誰ですか?それ。」
“雪女”などと呼ばれた試しは一度もない。
それに、雪女とはつまり妖怪ではないだろうか。
自分は妖怪になった覚えはない、とレンは思う。
「でも、その忍服木の葉だよな?木の葉で氷が使えるのなんて雪女しかいないって聞いたぞ!」
男の内の1人が興奮気味に声を上げる。
何故そんなに鼻息荒く、満面の笑みで詰め寄るのか、とレンは思いながら少し仰け反る。
「まぁ…。木の葉で使えるは私くらい、ですかね。」
あまり答えたくはないな、と思いながらも、聞き回ればすぐ分かることなので正直に答えておく。
「うおおぉぉ!俺、大ファンなんだよ!あんたの旅芸見たことあってさ!」
「俺も!あんな綺麗な雪見たことないよ!」
もう一回見たいくらい、と言いながら、目の前の男達は一歩レンに詰め寄る。
「俺も俺も!あんたの芸見かけたことがあってさ!あの氷細工!すっげぇ綺麗だったよ!」
「僕も見たことあるよ。凄く神秘的だよね。」
レンはあっという間に男達に囲まれてしまった。
「俺、ここにサインくれ!」
男の一人が額当てを外して裏地を出し、どこから持ってきたのかサインペンも一緒に差し出してきた。
それを見た他の者達に、俺も、俺も、と次々に額当てを差し出される。
レンはこの状況に困惑するしかない。
「…え。いや、あの…。何を書けば…?」
「名前を書いてくれりゃいいさ!」
そうそう、と周りも頷く。
それを聞いて、レンは戸惑いつつもサインを書いていく。