第72章 忍界大戦5
気を抜けばリヨクのことを考えそうになってしまう。
その度にレンは頭を振って、思い出を隅に追いやった。
今思い出して浸ってしまえば、立ち上がれなくなることは目に見えている。
鶴丸と薬研は、そのことに薄ら気付いていたが、何も言わなかった。
いや、何も言えなかったと言うべきか。
何を言っても、今はレンの負担にしかならないと思ってしまう。
本当はレンに寄り添い、苦しみを分かち合いたかった。
けれども、一歩が踏み出せない。
2人が逡巡している内に、レンはゆっくり立ち上がった。
「…何処かに行くのか?」
薬研が上体を起こしてレンを見上げると、彼女は少しため息をついた。
「休みたいけど休めなくて。ちょっと仕事探してきます。」
「仕事ならあるぜ。」
レンの後ろから、絶妙なタイミングで声がかかった。
「シカマルか。」
「そこは隊長って呼べよな。」
鶴丸が上体を起こしながら言うと、シカマルは微苦笑を浮かべながら答えた。
「にしても、あの騒ぎの中よく無事だったな。」
「まぁ…。割と一目散に逃げましたからね。」
レンは、げんなりしながら先程の怪物を思い出す。
「ま、そうなるわな。それが一番賢い。あんなのどう足掻いたって太刀打ち出来るもんじゃねぇしな。」
シカマルも先程の巨像を思い出してげんなりする。
チョウジがいなかったら俺も一目散に逃げただろうと、彼は思う。