第71章 〜〜幕間5〜〜
レンという名は、俺の最初で最後の贈り物だ。
思えば、何でもないいつもの日々が、小さな幸せの連続だった。
一緒に忍組手をして、
一緒に手裏剣の的当てをして、
一緒に任務に出て、
一緒に食材をとって…
何をするのも一緒だった。
自慢じゃないが、俺は人が嫌いだ。
最初、人と組まされると聞いた時には、そりゃあ苦く思ったもんさ。
冗談じゃない、ってな。
必要以上に関わるつもりなんて、これっぽっちもなかった。
けど、レンに会って共に過ごす内に、いつの間にか距離を許してた。
レンの側は居心地が良くなってた。
レンって不思議な奴だとよく思う。
特別いい奴でもないけど嫌な奴でもない。
けど、いつの間にか毒気を抜かれるっていうか…。
だから…。
関わらないと決めていたのに。
試練のことも知っていたのに。
いつしか、何も知らないレンに一から十まできっちり教えてた。
クナイの持ち方から、戦い方、森での生き方まで。
俺の持ち得る全てのことをレンに教えてた。
名前も無いと、本当の名は忘れたと聞いたから、レンという名を贈った。
嬉しそうに笑ったあいつの顔は今でも忘れない。
レンは、俺の短い生涯で持ち得た、たった一つの宝物だ。