第17章 薬を作る
濃い緑の香りが漂う山中を薬研とレンは黙々と歩く。
木漏れ日がちらちらと視界を舞い、足元が時折見えなくなるが、薬研は木の根が迫り出した獣道を迷いなく進む。
「大将、疲れてないか?」
「全く問題ありませんよ。」
「結構歩いたんだけどな。意外とタフだな。」
薬研は笑いながら言った。
「それはそうですよ。忍がこれくらいで屁張ってたら仕事になりませんから。もっとペースを上げてもいいくらいですよ。」
「…五虎退から大体の説明は聞いたが、ほんとにこの国の人間じゃないんだな。」
薬研は驚いた様な呆れた様な様子で答えた。
「そうですね。私の出身は、火の国にある木の葉の忍の里です。
私も最初は驚きましたよ。ここが元の世界じゃないことに。何よりあなた方が付喪神だっていうのが一番驚きましたけどね。」
レンはそう言って、少し肩を竦めて見せた。
「まぁ、付喪神に出会うことなんてそうそう無いしな。」
「依頼の魔物退治で、そういう類を見たくらいですかね。」
「…俺達は魔物じゃないぞ。」
薬研は嫌そうに答える。
「あ、すみません。つい。
要するに人以外のモノと会話をした事が初めてだったって言いたいだけですよ。」
薬研はがっくりしながらもレンの言いたいことを理解する。
「っと、着いたぜ。ここが薬草の群生地になってるんだ。」
薬研はそう言うと、手近な木の麓に生えている草を1本手折る。
「こういう草を取る。根ごと取らずに茎の節を折って摘むんだ。」
レンに渡して見せてやる。
葉が大きく、茎が太い。匂いを嗅いでみると僅かに苦い香りがする。
レンも足元を探すが、中々見つからない。
「この草はな、この木が好きらしくて、この木の麓に生えてることが多いんだ。」
薬研は木に手をつき、見上げながらレンに教える。