第17章 薬を作る
「この木は秋になると栄養価の高い実をつける。」
「何ていう木なんですか?」
「俺もよくは知らない。前の俺が記録を細かに残してくれてな。それで知ってるだけなんだ。」
「前の俺?」
レンは不思議そうに尋ねる。
「俺は先々代の審神者が顕現した、二振り目の薬研藤四郎だ。」
薬研は少し寂しそうに言った。
その様子を見て、レンは目を瞬かせた。
いいことなのか、悪いことなのか、よくわからない。
「…そう、ですか。…すみません、なんて言ったらいいか…。」
「はは、そう気を使うことはないさ。俺達兄弟は割とそういう奴が多いんだ。因みに、五虎退は三振り目だ。」
「…え、五虎退ってそんなに生まれ変わってるんですか?」
「生まれ変わるか…。いい響きだな。そう考えると、折れるってのもそう悪くないな。」
「…治したばかりですよ。縁起でもないこと言わないでください。」
「くくっ。違いない!さて、採り始めるか。」
数分後には両手で抱える程に集まった。
「よし、これくらいでいいだろう。」
「次は何処に行くんですか?」
「向こう側の崖下に生えてる草だ。」
少し歩くと開けた場所に出て、確かに崖になっていた。
薬研は膝と手をついて、崖下を覗く。
「いつもはこの辺に生えてるんだけどな…。」
きょろきょろと辺りを見回すと、崖の中腹辺りに目的の物を見つける。
「あった。だが遠いな。ここからじゃ届かない。下に回っても無理だろうな。他を探すか…。」
「どれですか?」
レンが薬研に倣い崖下を覗き込むと、薬研は指をさす。
「あれだ。少し茶色みを帯びた黄色い花をつけた草だ。あれは根が薬になるんだ。変な草でな、こういった絶壁を好むんだ。」
「黄色い花ですね。わかりました。」
そう言うと、レンは背負っていた籠を下ろし、立ち上がる。チャクラを練り足裏に集中させると、すたすたと崖を下っていった。