第70章 忍界大戦4
苦しい。
悲しい。
寂しい。
遣る瀬無い。
心にぐるぐると色々なものが渦巻いている。
ぐちゃぐちゃにかき混ぜられたように苦しく、細切れに切り刻まれたように酷く痛んだ。
「レン!しっかりしろ!」
鶴丸に肩を揺さぶられるが、立ち上がる気力はレンに残っていなかった。
何がいけなかったのか。
何処を間違ったのか。
戦争に加担しなければよかったのか。
ぐるぐると、過去の選択肢が頭に浮かんでは消える。
「おい!レン!」
鶴丸は何も写していないかのような昏い瞳に焦りを滲ませる。
「大将、しっかりしろ…!」
薬研も力なく肩を揺するが、レンはぴくりとも動かない。
まるで抜け殻のようだ、と背筋が寒くなる。
「レン!辛いのは分かる。だが、キミのせいじゃない!リヨクだって言っていただろう?生きろ、と!」
鶴丸は、半ば破れかぶれにレンを鼓舞する。
すると、リヨクの名前に反応を示したレンが、徐に鶴丸を見た。
「ねぇ…。私、何しに来たのかな…。戦争に来たんだよね…。」
「…そうだな。」
「じゃあ、何で…リヨクと殺し合いしてるのかな…。」
呟くと、レンはぐしゃりと自身の前髪を掴んだ。
「こんなん知ってたら…、こんなとこには来なかったんだけどな…。」
呟くように言うと、またぼたぼたと涙を溢した。
「レン…!」
鶴丸は見ていられず、レンを抱きしめた。
レンはしがみつくように鶴丸の着物を両手で握る。
「もう、消えてしまいたい…。」
吐息のように呟いた言葉は涙で震えていた。
鶴丸はその声を聞き、益々強く抱き込んだ。