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君に届くまで

第70章 忍界大戦4



「リヨク…。」

レンはリヨクの側に近づいていく。
彼女の瞳からは止めどなく涙が流れていた。

「レン…。やってくれ。」

レンは土壇場で逡巡する。

殺したくない…。

その思いがレンの決意を鈍らせる。
彼女は印を組んだまま俯いた。

「もう泣くな。」

そう言ったところで、レンの涙は止まらない。
リヨクは困ったように穏やかに笑う。

「生きろ。この先も足掻け。」

リヨクは、あの時言えなかった最期の言葉を言う。

「……!」

レンは弾かれたように顔を上げた。
そこには穏やかに笑うリヨクがいた。

「生き抜け、レン。そして、幸せを掴め。」


やっと言えた。

あの時、言いたくても言えなかった言葉を。

今やっとレンに言葉が届く。


レンはそれを呆然とした面持ちで聞いていた。

「俺は側には居れないけど、ずっとお前の幸せを願っている。」

レンは震える両手で、リヨクを頬を覆う。

「俺をもう一度送り返してくれ。やってくれるだろ。」

それを聞いて、レンは再び術を発動させた。

氷はリヨクの首を覆い、口を覆い、目を覆い、頭まで覆ってしまう。

その顔は穏やかな寝顔のようにも見える。

レンは崩れるようにその場にへたり込んでしまった。

「レン!!」

鶴丸が駆け寄るが、レンは見向きもせず、只々リヨクを見上げていた。

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