第70章 忍界大戦4
「左が甘く、胴体がガラ空きになる癖もそのままだ」
彼は悲し気に笑った。
いつにない、その泣いているような笑顔に、レンの頬に涙が伝う。
やるせなさ、悲しみ、悔しさ、懺悔…、様々な感情がレンの中に渦巻く。
けれども一番は…。
「…リヨクに死なないでほしかった」
子どもの駄々だと分かっている。
だが、言わずにはいられない。
「レン…。」
リヨクは切な気に目を細めた。
「話してほしかった…。」
過ぎた事だとわかっている。
「一緒に生き残る道を探してほしかった…。」
無理な事だとわかっている。
壊れた刻は、二度と巻き戻らない。
レンの頬に、後から後から涙が伝う。
リヨクは、それを悲し気に見た後、目を閉じて静かに口を開く。
「俺は何度同じ選択を迫られても同じ答えを出すだろう。
だから運命は変わらない。俺は何度でもお前を生かす。」
そう言って再び目を開けた。
「レン。たった一人の俺の兄妹。お前の手でもう一度あの世へ送ってくれ。」
お前の手で死にたい。
それは一点の曇りもない、リヨクの切なる願いだった。